魚類における環境認知は、感情に類似した状態をひきおこす

Cognitive appraisal of environmental stimuli induces emotion-like states in fish

M. Cerqueira, S. Millot, M. F. Castanheira, A. S. Félix, T. Silva, G. A. Oliveira, C. C. Oliveira, C. I. M. Martins, R. F. Oliveira

2017/10/13

https://doi.org/10.1038/s41598-017-13173-x

論文概要

 

ヒト以外の動物にも感情があるかどうかは、長年にわたって議論の焦点となってきた。最近では、この議論を四肢動物ではない脊椎動物や無脊椎動物にも広げられるかについて検証が始まっている。脊椎動物のなかでも真骨魚類は、四肢動物とは異なった進化的放散を示していることから、感情の生物学的メカニズムの進化を知る上で、特に興味深い研究対象である。

ここで報告する実験では、マダイを異なる環境刺激のもとに置き、刺激の性質としての感情価(ポジティブ・ネガティブ)と顕著性(予測可能・予測不可能)を変化させた場合、マダイが示す反応は、行動・生理機能に関する指標、および神経活動の分子マーカーにおいて異なっていた。感情に関する次元理論において、感情価と顕著性は感情空間を定める2つの次元であるため、上記の結果は、感情空間のコアにある4つの象限のそれぞれに対応した、明確に異なった情動が魚に生じていることを示している。

さらに、同じ刺激を予測可能な方法で提示した場合と予測不可能な方法で提示した場合では、行動・生理機能および神経分子機能における反応は異なっていた。この事実からは、刺激側の内在的な特性ではなく、各個体による主観的な解釈によって、このように異なった反応が誘発されたものと考えられる。従って、我々のデータは、魚類において感情に類似した状態が生じており、これを制御しているのは環境刺激に対する個体の知覚であることを示している。

 

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