アニマルライツのための破壊的抗議活動がもたらす短期的・長期的な影響

Short and long-term effects of disruptive animal rights protest

Markus Ostarek, Lennart Klein, Cathy Rogers, James Ozden & Laura Thomas-Walters

2025/07/16

https://doi.org/10.1057/s41599-025-05365-y

論文概要

 

食糧システムは人為による温室効果ガス排出の約3分の1を占めており、気候危機に対応するためにその変革が必要となっている。アニマルライツを唱える活動家は、直接的行動によるキャンペーンでこの問題に対する社会的関心を集めようとするが、このように破壊的な抗議行動が世論に及ぼす影響についてはほとんどわかっていない。

英国グランド・ナショナル競馬においてアニマル・ライジング Animal Risingが行った抗議活動は、アニマルライツのための破壊的抗議活動の一つであるが、本研究ではその短期的・長期的影響について、初めての詳細な検証を行った。

その結果、抗議行動に関する人々の認識は、行動が行われた直後では動物に対する否定的な態度に結びついていることがわかった。しかし、こうした否定的な効果は6ヵ月後には消失しており、社会の注目を集めた破壊的抗議行動は短期的には感情的反応を引き起こすものの、このような反応は時間の経過とともに薄れていくことが示唆された。

横断的な比較からは、動物に対する態度が6ヶ月間で全体的にポジティブな方向に変化していることがわかった。また、抗議行動によってメディアや社会の注目が急速に高まり、さらに多くの人々が抗議団体であるアニマル・ライジングに加わったこともわかった。

アニマルライツのための破壊的な抗議活動は当初は感情的反応を引き起こして逆効果になるが、こうした反応は動物に関する人々の考え方が全体的に進歩していく中で生じるものであり、短期的には必要な後戻りのステップであるのかも知れない。

 

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