プラントベース食の種類と消化器系ガンのリスク

論文概要

 

背景と目的: プラントベース食には様々な種類があり、それらがガンのリスクとどのような関係があるかは未だ明確ではない。本研究ではプラントベース食と様々な消化器系ガンのリスクの関係について、プラントベース食全般に関する指標(PDI)、プラントベース食のうち健康的なものに関する指標*(hPDI)、不健康なものに関する指標(uPDI)を用いて関連性を調べた。

方法: 病院間ネットワークで実施された症例対照研究のデータから、口腔・咽頭がん942例、食道がん304例、胃ガン230例、大腸ガン1953例、膵臓ガン326例を対象とした。妥当性を検証された食品摂取頻度質問票からPDI・hPDI・uPDI を算出した。これら3つの指標の各々について、その五分位Q・三分位T・粗点に多変量ロジスティック回帰モデルを適用し、消化器系ガンのオッズ比(OR)を推定した。

結果: PDI とガンのリスクには有意な逆相関が見られ、口腔・咽頭ガンにおける五分位間のオッズ比 ORQ5 vs Q1 は 0.63(95%信頼区間(CI)0.47-0.84)、食道ガンにおける三分位間のオッズ比 ORT3 vs T1 は0.47(95% CI 0.31-0.72)となっていた。この逆相関はhPDI で特に強かった(口腔・咽頭:ORQ5 vs Q1 = 0.52;95% CI 0.39-0.70、食道:ORT3 vs T1  = 0.59;95% CI 0.39-0.91、胃:ORT3 vs T1  = 0.42, 95% CI 0.27-0.67、大腸:ORQ5 vs Q 1= 0.69; 95% CI 0.57-0.84、膵臓:ORT3 vs T1 =0.60; 95% CI 0.41-0.89)。

一方、uPDI とガンのリスクには直接的な関連が見られ、口腔・咽頭ガンでは ORQ5 vs Q1  = 1.43 (95% CI 1.06-1.94)、 結腸直腸ガンでは ORQ5 vs Q1  = 2.28 (95% CI 1.86-2.81)、膵臓ガンではORT3 vs T1  = 1.74 (95% CI 1.14-2.65)となっていた。uPDI が最も高い四分位群では、食道ガンと胃ガンのリスクがそれぞれ34%および46%上昇していたが、有意差は認められなかった。

結論: プラントベース食、特に健康的なプラントベース食は、様々な消化器系ガンのリスクを低減できる可能性があるが、一方、不健康なプラントベース食ではガンのリスクが高まる可能性がある。従って、消化器系ガンに関するリスク評価と予防のためには、プラントベース食の質が重要となる。

* 健康的なプラントベース食の指標(hPDI)では、健康的な植物性食品(果物・野菜・ナッツ・全粒穀物など)に高スコアを、不健康な植物性食品(精製穀物・甘い菓子・糖分を含む飲料など)および動物性食品に低スコアを付与する

 

別のFACTを探す