動物を使わない研究に向けて、障壁を取り除く

論文概要

 

ヒトとの遺伝的・生理学的な類似性から、動物は何世紀にもわたって研究に利用されてきた。しかし、ヒトと動物の間には大きな差異が存在するため、こうした実験から得られる結果を混乱させる可能性がある。こうした差異により、動物で得られたデータをヒトに転用する可能性は低下し、新しい治療法の92%が臨床試験において失敗に終わることの主要因となっている。

科学研究の進歩により、ヒトに焦点をおいた新たなアプローチ方法論 New Approach Methodologies (NAMs) として、in silico モデルや3次元 in vitro モデルなどが開発されてきた。こうした新しい手法を活用することで、ヒトに関する生物学研究、疾患や新しい治療法の評価における予測精度が向上する可能性がある。

しかし、NAMのさらなる普及には財政面での制約や出版バイアス publication bias *の可能性など、依然としていくつかの障壁が残されている。また、NAMは動物実験と比較すると新しい領域であるため、その信頼性に対する懸念もある。本稿では、研究におけるヒトと動物の違いを概説し、NAMをより広く普及させる上での障壁について詳しく議論するとともに、ヒトに焦点をおいた研究への移行を加速させるための提言を示す。

* 否定的な結果が出た研究は、肯定的な結果が出た研究に比べて公表されにくいというバイアス(Wikipedia より)

 

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