動物を利用することに対する考え方 種差別主義・個人の道徳的能力・好感度・人口統計学的要因による影響

Attitudes to animal use of named species for different purposes: effects of speciesism, individualising morality, likeability and demographic factors

Sara Marriott & Helen J. Cassaday

2022/04/20

https://doi.org/10.1057/s41599-022-01159-8

論文概要

 

動物に対する態度や動物を利用することに対する考え方は、自然や環境の保護を目的とした活動においてますます重要となりつつある。動物についての考え方、動物から感じる好感度、個人の道徳的能力は、いずれも動物の利用に対する考え方に強く影響する要因と考えられる。本研究では参加者320人を対象としたオンライン調査を実施し、動物目的尺度(APQ)、好感度と種差別に関する尺度、道徳基盤尺度の下位項目、人口統計学的特性に関する調査項目に対して回答を得た。

調査の結果から、参加者は愛玩動物を利用することに最も反対しており、その一方で産業動物や有害動物の利用に関しては中立的であった。動物の利用に反対する傾向が強かったのは、動物を愛好する気持ちの強い人や、個人主義的な道徳観が強く、種差別主義的な考え方があまりない人であった。また、若い女性で肉を食べない人は、動物を利用することに対してより強い懸念を示していた。

個人主義的な道徳観と種差別主義、さらに食に関する志向などの個人的要因は、動物の利用に関する APQ の態度スコアを予測できる重要な要因であった。種差別主義は、APQ の総スコアを最も強く予測できる個人的要因であり、階層回帰の分散において最も大きな割合を占めていた。全体として、種差別主義において働いている偏見は、人間と人間以外の動物という区別、ペットとペット以外の動物という区別であることが示唆された。

さらに、他の人間の権利を尊重する態度に関する全般的尺度からは、動物の権利を尊重するという態度も予測することができた。以上の結果は従って、人間と動物の関係の基盤にある心理メカニズムには、人間と人間の関係の基盤にある心理メカニズムと類似性があることも示唆している。

* 動物の利用に関する態度を、その目的と動物種に関連付けて測定するために考案された尺度

 

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