動的規範はプラントベース食品の販売促進に有効か? オランダのスーパーマーケットにおける準実験的調査

論文概要

 

背景: 社会規範の変化に関する情報提供は、健康的で持続可能な食品の選択を推進できる有望な手段とされている。本研究では、こうした動的規範を用いた介入を実店舗のスーパーマーケットで行った場合に、肉類を代替する食品(代替肉・豆類)の販売量が増加するかどうかを検証した。

方法: 介入を実施したスーパーマーケット3店および対照条件のスーパーマーケット3店において準実験的手法による調査を12週間にわたって行った。介入群のスーパーマーケットでは、社会規範の変化を文章で説明したステッカーやのぼり旗*を店舗の入口や肉売り場など店内の様々な場所に設置した。さらに、代替肉の視認性を高めるとともに、選びやすいように豆類を肉類・代替肉の近くに配置した。週当たりの販売量データを75週間にわたって収集し、このうち62週は介入前、13週は介入期間中のデータであった。介入群の店舗における代替食品の販売量(グラム単位)の変化について、分割時系列分析を用いて介入前の販売傾向と比較し、対照群の店舗における販売量と比較した。副次的アウトカムとして、週当たりの肉類の販売量(グラム単位)、代替食品と肉類のタンパク質含有量の比率を分析した。

結果: 介入前における代替食品の週間販売量(グラム)の平均値は、対照群の店舗で371,931.2(標準偏差 113,055.3)、介入群の店舗で299,012.5(91,722.8)であった。介入前の販売傾向や対照群の店舗と比較して、介入群の店舗における代替食品の販売量には違いはなかった(B = -685.92; 95% CI [-9904.8; 8525.7])。肉類の販売量にも変化はなく(B = -130.91; 95% CI [-27,127.50; 26,858.33])、週当たりの代替食品と肉類のタンパク質含有量の比率にも変化は見られなかった(B = -670.54, 95% CI [-8990.6; 7644.4])。

結論: 消費者に情報を提供するため、社会規範の変化を文章で説明し、店内での代替食品の視認性を向上させる手段を用いたが、代替食品の販売増加は見られず、肉類の販売減少にもつながらなかった。スーパーマーケットは持続可能な食品の選択を進める上で重要な役割を担っており、プラントベース食品の購買量を増やし、肉類の購買量を減らすためには、より実効性の高い取り組みや変化が必要である。

* 具体的には「ベジタリアン食品を購入するお客様が増えているため、当店では幅広い選択肢を用意しております」といった情報が提供されている。実際の調査で使われたステッカー等の見本は以下のリンク(Fig. 1)を参照 https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-025-03986-3

 

原文タイトル:Can (dynamic) social norms encourage plant-based food purchases? a quasi-experimental study in real-world Dutch supermarkets

論文著者:Sofia M M Wolfswinkel, Sanne Raghoebar, Josine M Stuber, Emely de Vet, Maartje P Poelman

公開日: 2025/03/11 

論文URL:https://doi.org/10.1186/s12916-025-03986-3

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