屠殺現場における職務満足度と動物福祉 英国とアイルランドの獣医官を対象とした調査

論文概要

 

英国とアイルランド共和国における獣医官 Official veterinarian は、それぞれ食品基準庁と食品安全庁に雇用され、動物福祉と食品の安全性に関する法的権限を有している。獣医官における職務満足度はほとんど知られていないが、これに携わる人々の幸福や業務遂行に影響している可能性がある。また、現実の屠殺現場で動物福祉に関わる問題に立ち会う中で、獣医官がこうした問題をどのように認識しているか、それが職務満足度に影響しているどうかは不明である。

本研究では、英国とアイルランドの獣医官を対象としてオンラインアンケートを実施し(回答者113名)、職務満足度および屠殺現場での動物福祉に対する認識について調査した。アンケートでは、回答者の社会人口統計学的属性のほか、様々な側面から見た職務満足度や、屠殺現場での動物福祉の問題について回答者の認識を尋ねた。

ほとんどの獣医官は責任感を持って職務に取り組んでいたが、職場での孤独感や危険を感じるような状況、睡眠障害など、職務満足度を損なうような問題を経験していた。動物福祉の問題は職務満足度に影響を与えることが多く、屠殺場における福祉改善の最大の障壁の一つとして、食品事業者との対立が挙げられていた。さらに、獣医官は宗教儀式での屠殺に立ち会うが、こうした慣行にはほぼ確実に反対している。このため、これを禁止すべきであると考える人ほど、個人的な倫理観との葛藤を感じる傾向も見られた。

本研究の結果は、獣医官の職務に関しては重大な課題が様々に存在することを明らかにするとともに、支援のためのネットワークを構築することでこの職務に携わる人々を守り、屠殺における動物福祉を担保する必要性があることを示している。

 

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