微生物タンパク質で牛肉を置き換えた場合の環境面のベネフィットを予測する

Projected environmental benefits of replacing beef with microbial protein

Florian Humpenöder, Benjamin Leon Bodirsky, Isabelle Weindl, Hermann Lotze-Campen, Tomas Linder & Alexander Popp

2022/05/04

https://doi.org/10.1038/s41586-022-04629-w

論文概要

 

牛や羊など反芻動物の肉は人類にとって重要なタンパク質源となっているが、畜産は環境に対して多くの悪影響を及ぼしており、特に森林破壊や温室効果ガス排出、水使用、富栄養化などの問題を引き起こしている。畜産によるこうした外部コスト*1 を低減する手段としては、プラントベースの食習慣へのシフトのほか、プラントベース代替肉や培養肉、発酵由来の微生物タンパク質 microbial protein (MP) などのコピー食品が提案されてきた。

ライフサイクルアセスメント*2 を用いた研究では、糖質を原料としてバイオリアクターで生産された MPは、特に反芻動物の肉と比較した場合、環境面で大きな便益をもたらすものと推定されている。ここでは、2050年に向けた世界の土地利用シナリオにおいて、反芻動物の肉を MPで代替した場合の効果について分析する。本研究は、将来の社会経済の中で MP がもたらす環境面の便益を推定し、これまでのライフサイクルアセスメント研究を補完するものである。

我々のモデル予測によれば、反芻動物の肉の1人当たり消費量のうち、(タンパク質ベースで)20%を2050年までに MP に置き換えた場合、今後の世界における牧草地面積の増加を相殺し、年間の森林破壊と関連する CO2 排出量をほぼ半分に削減するとともに、メタン排出量も削減することが可能となる。

しかし、MP が消費者に受け入れられると仮定し、この置換率をさらに引き上げた場合、森林破壊および関連する CO2 排出量を低減する効果は非線形の飽和状態に至ることがわかった。この効果は、静的なライフサイクルアセスメントの手法では捉えることができないものである。

*1 生産者または消費者の活動によって発生する費用で、市場取引の場では価格に反映されず、社会全体で負担するものを指す *2 製品・サービスの製造・生産から廃棄・リサイクルまでのライフサイクルを細分化し、環境負荷を定量的に評価する手法

 

別のFACTを探す