海洋保護区が自然と人類にもたらすコベネフィット

論文概要

 

自然環境を保護するための介入策は、人類が自然と不可分な関係にある以上、持続可能な開発目標を達成するうえで中心となる戦略である。持続可能性のための介入策には貧困の緩和、食糧安全保障、海洋資源の保護といった多くの目標があるが、現在議論されているのは、海洋保護区のような介入策がこうした異なる開発目標に共通の便益(コベネフィット)を促進するのか、あるいはトレードオフを促進するのかという問題である。海洋保護区が生態系や社会にもたらすコベネフィットに関する定量的な検証は不足しているため、この問題を解決するのはこれまで困難であった。

ここでは、メソアメリカ地域におけるサンゴ礁魚類の豊度と人間の幸福に関する尺度(収入・食習慣・食料安全保障など)の間の関係について、海洋保護区がコベネフィットとトレードオフのいずれに関連しているのか、統計的マッチングの手法を用いて検証する。

その結果、厳しい漁獲制限を設けた高度保護区では、保護されていない区域や、海洋保護区の「一般利用区域」と比較して魚類の平均豊度が高く、安定または増加傾向にあることがわかった。また、海洋保護区から遠いコミュニティと比較した場合、海洋保護区における収入および食料安全保障に関する指標は高く、こうした傾向は特に高度海洋保護区に近いコミュニティで顕著であった。

さらに、海洋保護区に近い場所や、魚類資源が豊富なサンゴ礁に近い場所では、区域に関わらず幸福度と正の相関が見られた。これらの結果は、魚類と人類に海洋保護区がコベネフィットをもたらすことを定量的に示す知見であり、持続可能な開発目標を達成するうえで海洋保護区が持つ潜在的価値を強く示している。

 

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