消費者の肉へのこだわりと農業政策の目標としてのアニマルウェルフェアの重要性

Consumers’ meat commitment and the importance of animal welfare as agricultural policy goal

Jeanine Ammann, Gabriele Mack, Judith Irek, Robert Finger, Nadja El Benni

2023/10/06

https://doi.org/10.1016/j.foodqual.2023.105010

論文概要

 

  • 食肉へのこだわりは、アニマルウェルフェアの重要性に対して否定的に作用する重要な予測因子である
  • 肉へのこだわりが強い人では、普遍主義的価値観(アニマルウェルフェア)を支持する傾向が低かった
  • アニマルウェルフェアは、3つの異なる政策目標と全面的に対立する場合でも重要とされたアニマルウェルフェアは個人の価値観に直接的に訴えかける
  • 農業政策は個人の価値観とともに発展する必要がある

アニマルウェルフェアは農業政策における主要な目標のひとつであり、消費者の側からも極めて重要だと考えられている。持続可能で健康的な食生活への転換が急務となるなかで、アニマルウェルフェアは行動変容を促すための重要な動機付けの一つとなりうる。そこで我々は、消費者がアニマルウェルフェアの重要性をどのように認識しているか、農業政策の目標としてだけでなく、国内の食料生産や農家の収益、消費者価格といった相反する政策目標との比較について検証する。すなわち、農業政策の目標としてのアニマルウェルフェアの重要度が、個人の行動としての食肉の消費、個人の価値観・態度としての食肉へのこだわり、農家に対する認識、エコロジカル・ウェルフェア尺度(アニマルウェルフェアと環境保護を含む)の評定値とどのように関連しているかを調査した。

そのため、2022年10月にオンライン調査を実施し、スイス国内のドイツ語圏・フランス語圏・イタリア語圏から1542人(女性51.5%)の参加者を均等に募集した。参加者には、以下のように相互に対立する3つの政策目標のもとでのアニマルウェルフェア向上の重要性について評価するよう求めた: (1) 国内における食料生産の増加、(2) 食料の消費者価格の引き下げ、(3) 農家における収益の増加。回帰分析において影響力のある予測因子は、これら3つのモデルのすべてで類似していた。すなわち、上記の3つの状況のいずれにおいても、女性であること・政治的に左派寄りであること・肉食へのこだわりが低いこと・農家に対してより否定的な認識を持っていること・食品消費における倫理をより重視していること、これらの要因によってアニマルウェルフェアに重きをおく傾向は強くなっていた。肉食へのこだわりが強い参加者では、相反する3つの農業政策目標を比較検討する際にアニマルウェルフェアを重視しない傾向が見られたが、この結果は過去の研究結果とよく一致している。農業政策に対する研究結果の意義について考察する。

 

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