赤肉の摂取と末期腎不全のリスク

論文概要

 

ランダム化比較試験によれば、タンパク質の摂取を制限すれば慢性腎臓病から末期腎不全への進行を遅らせることができるとされている。しかし、(慢性腎臓病に限らず)広く一般の人が末期腎不全に至るリスクを考える場合、食生活におけるタンパク質の摂取量や、その供給源となる食品がどのように影響しているかは不明である。

シンガポール中国系住民健康調査 Singapore Chinese Health Study は、1993年から1998年に45~74歳の中国系の成人63,257人を対象として実施された前向きコホート研究である。本研究ではここで得られた調査データを用いて上記の問題を検証した。半定量的なアンケート調査である食事頻度質問票を用いて食習慣に関する情報を収集し、全国調査とのデータ連結によって末期腎不全を特定した。

15.5年間の平均追跡期間において、合計951例で末期腎不全への進行が見られた。タンパク質の総摂取量が最も少ない四分位群と比較した場合、総摂取量の多い3つの四分位群における(末期腎不全の)ハザード比は1.24(95%信頼区間[95% CI]、1.05~1.46)であり、四分位群を全体として見た場合にタンパク質の摂取量による関連性は見られなかった(Ptrend=0.16)。

赤肉の摂取量は末期腎不全のリスクと強く関連していた。摂取量が増えほどこの関連は強くなり、摂取量が最も多い四分位群におけるハザード比は、最も少ない四分位群との比較で 1.40 [95% CI、1.15~1.71;Ptrend<0.001] となっていた。鶏肉・魚・卵・乳製品の摂取量については末期腎不全のリスクとの関連は見られなかった。

置換分析では、1食分の赤肉を他のタンパク質源で置き換えた場合、末期腎不全の相対リスクは最大で62.4%低下した(95%信頼区間、33.1~78.9;P<0.01)。本研究の結果から、末期腎不全のリスクは赤肉の摂取によって一般的に高まること、その発症率は代替タンパク質源に置き換えることで低下する可能性があることが明らかになった。

 

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