酪農の現実を再文脈化する言説 批判的動物研究の視点

Hard to swallow? A critical animal studies perspective on the discursive recontextualisation of the reality of dairy farming

Gavin Brookes and Małgorzata Chałupnik

2024/12/09

https://doi.org/10.1177/17504813241299002

論文概要

 

本稿では、酪農生産に携わる関係者とプロセスがどのようにイメージされているかについて、マルチモーダルな批判的言説分析を行った。英国最大の乳製品企業であるアーラ・フーズ Arla Foods UKのウェブサイトに焦点を当て、酪農家と乳牛、さらに酪農のプロセスそのものを表現する際にどのような言葉やイメージが使われているかを検証した。

分析からは、酪農業界に対して明らかに好意的なイメージを構築するために、繰り返し使われている表現があることが明らかになった。こうした表現はしかし、より複雑でより不都合な酪農生産の現実からかけ離れたものであることが多い。

特にウェブサイトでは、牛を擬人化することや、牧歌的な牧草地として牧場を描写すること、(環境への影響や動物福祉の問題など)酪農生産の好ましくない側面を省略することなど、酪農を再文脈化するためにさまざまな言説が用いられている。こうした表現戦略は、無害化された酪農生産のイメージに消費者の認識をすり合わせ、倫理に配慮していることを装いながら消費の継続を促すように設計されたものである。

批判的動物研究*のレンズを通して見ると、このウェブサイトから生まれる公の言説は、酪農関係者のイデオロギー的および商業的な利益に奉仕するものであり、現代の集約的・工業的な酪農生産の現実を覆い隠し、持続可能性と動物への配慮の理想化されたイメージを構築していると言える。

* 動物の搾取・抑圧・支配を批判的に分析し、それらを根絶することを目指す学問分野

 

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