台湾動物保護法 全文翻訳(2017年4月26日改正)

始めに、日本の動物愛護管理法(2017年時点)と比較して、台湾の動物保護法が優れていると感じた点を述べる。 台湾では動物の定義が「犬、猫または他の人間が飼育あるいは保有する脊椎動物を指す。この中には商業動物、実験動物、伴侶動物及びその他の動物が含まれる。」とされており、罰則対象は飼育下の脊椎動物とされており、魚類・両生類が含まれている。いっぽう日本の法律は罰則対象となるのは「愛護動物」とされており、「愛護動物」の定義は”牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの”、とされており、魚類・両生類が省かれている。 台湾では「毎四半期にこの法律の成果を検査して検討する。」となっているが、日本では5年をめどとして動物愛護管理法の施工状況を検討するとなっている。 台湾では「動物を飼う人は20歳以上でなければならない」とされている。日本にはそういった規定がない。 台湾動物保護法第5条に、動物を飼育するものが守るべき事項として ・ケージ(籠)で動物を飼っている方は、その籠の内部空間が動物自身が十分にストレッチできることを保証するとともに、籠の外で十分な活動時間があることを保証する。 ・紐と鎖で動物を繋げる場合は、その紐と鎖の長さが動物自身より長くて、動物が十分にストレッチできるように確保するとともに、安全で快適、適当な締まり具合がある首輪を使い、十分なアウトドア活動の適時に供給されることを確保する。 などと書かれており、この項に反すると罰則もある。また所轄の改善指導に従わなかった場合は飼育している動物を没収することができる。 いっぽう日本には動物の飼育スペース、自由度についての決まりはなく、それについての即罰規定もない。行政は「動物を没収する」という権限も与えられていない。 台湾動物保護法第9条では輸送について定められている、特に豚・牛・羊を輸送する従業員は訓練コースを卒業し、在職中の訓練も求められている。さらに「動物輸送管理方法」に従う必要がある。これに従わない場合は罰則が定められている。 日本の動物愛護管理法には輸送に関する条項はなく、畜産動物に特化した規定もまた無い。 台湾動物保護法第10条では次のことが禁止されている。 ・直接、間接を問わず、賭博、娯楽、事業、宣伝、その他の非合法目的のために、動物同士、あるいは動物と人間とが闘うこと。 ・直接、間接を問わず、賭博のために動物をレースやコンテストに使用すること。 ・動物を運送、競売、拘束する際に、暴力ふるったり不当な電撃で追い立てたりすること。または、刃物など傷害性がある方法で動物にマークを付けること。 ・屠殺場で、商業動物が人道手段を通さずに、気絶、水を加える、強制的に食べさせる、縛る、切断、投げる、瀉血をすること。 これに違反すると罰則があるだけではなく主管機関は、改善命令ができる。そして指定期間内に改善が行われなかった場合は動物を没収することができる。 一方日本では娯楽目的に動物同士を争わせる闘犬・闘牛・闘鶏が継続されており違法ではない(ただし、いくつかの自治体では条例でこれを禁止してる)。また畜産動物の追い込み方法、人道的屠殺法についての規定はなく、罰則や改善命令などの定めもない。 台湾動物保護法第13条には、「国の主管機関は実際状況に即して人道的に動物を屠殺する準則を制定しなければならない。」とあり、これの準則に従わずに動物を屠殺した場合は罰則がある。 一方日本には畜産動物に特化した条項はない。 台湾動物保護法第14条には、犬猫について、「直轄市、県(市)の主管機関は規定を制定し、私立の機関・団体の動物シェルター設立に際して、それを奨励するための手段を講じ、また、援助を与える。」とある。 日本の動物愛護管理法には民間の動物保護団体を支援するような条項はない。 台湾動物保護法では、動物実験については15~18条までの条文がある。 ・基本的な3Rの遵守 ・実験終了後は動物の状態を直ちに診断すること ・回復の見込めない動物を安楽殺すること ・高校以下の学校は主管機関からの許可がない限り、動物に傷をつけたり死なせるなどの実験の授業を行ってはいけないこと などが定められている。違反した場合は改善指導が出され、それに従わない場合は罰則が定められている。また実験動物倫理委員会の設置義務に違反した場合は、即罰規定となっている。 一方日本には3Rと回復の見込めない動物の安楽殺についての決まりはあるが、罰則規定はない。実験終了後の速やかな動物の診断、学校における動物実験についての規制や動物倫理委員会の設置義務はさだめられていない 台湾動物保護法には、行政監督として第23条に次のように記載されている。 「直轄市、県(市)の主管機関は動物保護監視官を置くとともにボランティアを選んで補佐として動物の保護検査作業を補佐する。動物保護監視官は動物コンテストの会場、屠殺、繁殖、売買、一時預かり、展示及び他の営業場所、訓練、動物の科学的使用を行う場所に出入りし、調査を行い、この法律に違反があった場合には、それを止めさせることができる。 前項の調査、及び違反行為の禁止を、回避、妨害または拒否することはできない。」 日本の動物愛護管理法でも、行政は動物愛護担当職員を置くことができるものとし、地域のものから、動物愛護推進員を委嘱することができるとしている。また動物の飼養者に報告を求めたり立ち入り検査をする権限も与えられているが、屠殺場や動物実験施設への立ち入りはできない(ただし特定動物は別)。 台湾動物保護法原文 法規名稱:    動物保護法 ( 民國 106 年 04 月 26 日 修正 ) *赤字部分はARCによる注釈 *法律の文中における「第一項」は一段落目、「第二項」は二段落目をいう。 台湾 動物保護法(2017年4月26日改正) 第一章 一般条項 第1条 動物の尊重とその保護を目的として、ここに法を定める。 動物の保護はここに定められている規定に従って履行される。他の関連法に記載されている条項が適用するものについては、その規定に従う。 第2条 当法律でいう主管機関部門とは、中央政府では行政院の農業委員会、直轄市では直轄市の政府、県または市では、県または市の政府を指す。直轄市及び県または市の政府は動物保護の専属な機関を設置し、当法律の諸般の取り組みを行う。 第3条 当法律で使用される用語の定義は以下の通り: 一、動物とは、犬、猫または他の人間が飼育あるいは保有する脊椎動物を指す。この中には商業動物、実験動物、伴侶動物及びその他の動物が含まれる。 二、商業動物とは、毛皮、肉、乳、労働などの商業目的で飼育あるいは保有される動物を指す。 三、実験動物とは、科学的使用目的で飼育あるいは保有される動物を指す。 四、科学的使用とは、教育、実験及び生物関連製品、実験的商品、薬品、毒物、臓器移植の開発を目的とした使用を指す。 五、伴侶動物とは、犬、猫または他の動物で、人間が愛玩用、コンパニオンとして飼育、あるいは保有しているものを指す。 六、伴侶動物フードとは、中央政府主管機関部門により指定される伴侶動物に栄養バランスを供給する食料及び他のものを指す。 七、飼育者とは、動物の所有者あるいは動物を保有している者を指す。 八、動物繁殖場とは、商業用の目的とする動物の育成、改良、または繁殖する場所を指す。 九、伴侶動物フード業者とは、製造、加工、卸売、輸入または輸出の営む業者を指す。 十、虐待とは、飼育、管理または必要な処分行為を除いて、薬品を使わず、暴力、または他の方法で、動物を傷つかせ、または正常な生理状態を維持できない行為を指す。 十一、運送従業者とは、動物運送を職業とする従業者を指す。 十二、屠殺従業員とは、屠殺場で商業使用動物の屠殺を職業とする従業員を指す。 十三、展示演出動物とは、営業場所で娯楽の目的として展示演出と騎乗される動物を指す。 十四、展示演出動物業とは、営業場所で娯楽の目的として動物の展示演出と騎乗する従業員を指す。 第二章 動物の一般的保護 第4条 政府主管機関は専門家、学者、関連する機関及び動物保護市民団体代表を選んで任命し、法律の立案を検討するとともに、毎四半期その成果を検査して検討する。この中には政府とは関連のない専門家、学者、動物保護市民団体メンバーが委員会の2分の3以上を占めなければならない。 動物治療用の薬物が足りない際には、政府主管機関により公示された人間用の薬物は,獣医師の診療記録に書き込んだ上で、獣医師の指導のもとで犬、猫及び非商業用動物に使われる。 上記した人間使用薬物が犬、猫または非商業使用動物に使われ、管理され、または他の規則を従う詳細な履行は、政府主管機関と政府衛生部門により定められる。 第5条 動物を飼う人は20歳以上でなければならない、20歳未満の方が動物を飼う場合には、法定代理人あるいは法定保護者は動物の飼う人と見なす。 飼育者は動物を飼う際には、下記する項目に基づいて行わなければならない。 (一)害がない適当で清潔な食物を供給するとともに、24時間の清潔な水を十分に供給する。 (二)安全で清潔、風通し、防水、適当または適量な遮蔽と採光がある生活環境を供給する。 (三)動物の法定伝染病に対して必要な対策を供給する。 (四)正当な理由のない嫌がらせ(ハラスメント)、虐待、けがから動物を守るために配慮しなければならない。 (五)籠で動物を飼っている方は、その籠の内部空間が動物自身が十分にストレッチできることを保証するとともに、籠の外で十分な活動時間があることを保証する。 (六)紐と鎖で動物を繋げる場合は、その糸と鎖の長さが動物自身より長くて、動物が十分にストレッチできるように確保するとともに、安全で快適、適当な締まり具合がある首輪を使い、十分なアウトドア活動の適時に供給されることを確保する。 (七)危険が起こる際には、動物を安全なところに転移するとともに、死を逃れる機会を供給する。 (八)長時間狭い空間に閉じ込めることをしてはいけないとともに、呼吸できるように対流通道が開いた状態を確保する。 (九)他の適切な世話を供給する。 (十)不妊(去勢)手術を除いて、動物に必要がないまたは医療目的がない手術を施してはいけない。 その動物を動物シェルター、あるいは直轄市と県により指定される場所に連れて行くのを除いて、遺棄してはいけません。 第6条 何人も、他者が飼養する動物に嫌がらせをしたり、虐待したり、けがをさせてはならない。 第6-1条 展示演出動物を営む従業員は主管機関から許可を取った上で営める。 前項の展示演出動物業の設置と管理方法は、中央主観機関により定められる。 第一項に従わない展示演出動物従業員は、改正実行の日から一年のうちに許可を取らなければならない。 第6-2条 各政府部門に属する検疫犬、麻薬探知犬、警備犬、災害救助犬または国防軍犬の毎週の作業時間、服務年限、老衰介護などの事項は中央主管機関により定められる。 第7条 飼養者は自分の飼養する動物が、他人の生命、身体、自由、財産、平安を侵害しないようにしなければならない。 第8条 政府の主管機関は飼養、輸入、輸出が禁止されている動物の種類について公示する。 第9条 動物を輸送する場合、食料、水、トイレ、環境、安全について配慮しなければならない。加えて、動物が怯えたり、けがをしたりしないようにしなければならない。 中央主管機関により公示される動物*を運送する従業員は、就職前の訓練コースを卒業し、運送許可を取る上で、運送業務を行える。 前項に運送従業員は就職前の訓練コースを卒業して運送を行った後、二年目は在職訓練を受けなければならない。運送従業員の訓練コース、動物を運送する道具、方法または他の従わなければならない事項は中央主管機関により定められる。 *「中央主管機関により公示される動物」とは豚、牛、羊を指す 参照:行政院農業委員會公告 中華民國97年8月18日(2008年8月18日) 農牧字第0970040852號…