反芻動物と気候変動:英国の主要メディアと農業関連メディアにおける言説の転換点

論文概要

 

反芻動物は温室効果ガスの主要な排出源であるが、社会の対応をめぐっては議論が続いている。メディアの言説は、一般市民や政策決定者へのアジェンダ設定において重要な役割を担っており、社会の分断を助長する可能性がある。

本稿では反芻動物の気候変動に及ぼす影響について、2016年から2021年までにこの問題を取り上げた英国のニュースメディアにおける報道姿勢を検証する。分析では全国紙と農業専門紙における言説を定性的手法によって比較し、これまでの知見の空白を検証する。

調査では全国紙4紙および農業専門紙2紙において2016年から2021年に掲載された記事を検索した。関連記事996件を収集してコーパスを作成し、このうち抽出した154件の記事について批判的言説分析(Critical Discourse Analysis)を用いて詳細に検討した。

調査対象となった6年間において、この問題をめぐる言説には以下のような4つの重要な転換点(Critical Discourse Moments:CDMs)が存在することが明らかとなった。1) 注目度の低さと多様な言説、2) 肉食を大幅に減らす必要性、3) 肉食に反対する主張への反発、4) COP26の前後に取られた政策行動あるいはその不作為。

関連記事の件数は2019年1月以降に大幅に増加しており、これは EAT-ランセット委員会による報告書* が発表されたことと一部関連している。CDM 2(肉食を大幅に減らす必要がある)は主に全国紙で取り上げられたのに対し、CDM 3(肉食に反対する主張への反発)は主に農業メディアで取り上げられていたた。

調査結果からは、全国紙と農業専門メディアの間で主張が二極化し、両者は社会集団としても分断されていること、また食糧システムに内在する権力の不均衡に対するメディアの関心が低いことが明らかとなった。反芻動物からのメタンガス排出への対応に関して、こうした二極化の問題を解決することは、社会の意思決定能力を高めるうえで重要になると思われる。

* 同報告書は畜産(特に牛や羊などの反芻動物)の生産量を世界全体で最大70%削減することを強く提唱している

 

原文タイトル:Ruminant livestock and climate change: critical discourse moments in mainstream and farming sector news media

論文著者:Philippa Simmonds, Damian Maye, Julie Ingram

公開日: 2024/11/11 

論文URL:https://doi.org/10.1007/s10460-024-10651-7

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