論文概要
米国における3年間の食料品購入を分析したところ、植物由来代替肉は食肉支出のわずか3%を占めるにすぎず、動物由来肉の需要にはほとんど影響を与えていなかった。
食品部門は世界の温室効果ガス排出量の約3分の1を占め、そのうち約80%が動物性食品の生産に由来する。これを受け、より持続可能な食生活の必要性が科学者と消費者の双方で広く認識されるようになった。近年、有望な選択肢として登場したのが植物由来代替肉(PBMA)である。これらの製品は肉を食べる感覚の再現を目指しているが、味や価格に対する消費者の懸念、過度に加工され不健康だという印象など、依然として大きな障壁に直面している。
従来のPBMA需要分析では、製品を一つか二つの大分類にまとめるか、調査や実験研究に依存してきた。しかし、こうした方法では、消費者が具体的な植物由来製品と動物由来製品の間で食肉支出をどのように配分しているかはほとんど分からない。この空白を埋めるため、本研究は製品レベルの食肉購買行動を調べ、価格と世帯収入がPBMAと動物由来肉の選択にどう影響するかを検討した。
データは、2019年から2021年に米国の代表的な13万6,553世帯が食料品店で行った購入記録から収集された。研究者は世帯収入と食肉予算の配分をモデル化し、世帯の購買力によって購入行動がどう変化するかを調べた。また、ある種類の肉の価格変化が別の種類の購入変化と関連するかも検討した。最後に、PBMAの値下げが購買行動に及ぼす影響をシミュレーションした。
研究者は食肉購入を分析するため二つのモデルを用いた。第1のモデルでは、すべての食肉製品を生鮮、加工済み、完全調理済みの三つに分類した。第2のモデルでは、この三分類をさらに26の小分類に分け、そのうち10組を直接比較可能な組み合わせとした(例:植物由来ソーセージと動物由来ソーセージ)。各製品について、支出額と購入量のデータから食料品店での単価を算出した。価格データが欠けている場合は、まず店舗チェーンと郵便番号の範囲から始め、段階的に地理的範囲を広げた中央値を用いて推定した。
注目すべき点として、世帯は平均して収入の19%を食肉製品に充てていた。食肉支出のうちPBMAに向けられたのはわずか3%だった。2019年から2021年まで、この配分は毎年ほぼ同じであり、PBMAへの代替は依然として小規模で、2021年時点で停滞していたことを示す。3年間を通じて最も人気の高いPBMAはビーフパティー類で、鶏肉を模した製品がこれに続いた。
さらに、PBMAは動物由来肉より高価で、平均すると1オンス当たり約0.19ドル高かった。ベーコン、ビーフパティー、鶏肉・家禽肉、その他の調理済み肉の各PBMAは、動物由来の対応製品の2倍の価格だった。PBMAのランチミートだけがより安かった。PBMA需要は世帯収入にも反応しており、相対的な価格の高さが低所得層への普及を制限している可能性がある。収入への反応が最も大きかったのはPBMAのベーコンと牛肉風ミートボールで、最も小さい部類には牛ひき肉風製品、ランチミート、ビーフパティーが含まれた。
また、鶏肉風、ランチミート、ミートボール、その他の肉など複数のPBMAカテゴリーでは、動物由来版よりも需要が価格に敏感だった。一方、ビーフパティー、牛ひき肉風、ベーコン、ソーセージのPBMAでは逆の傾向が見られた。
研究では、相対価格が購入判断に影響することも判明した。ビーフパティー、牛ひき肉、鶏肉、ランチミート、ミートボール、ソーセージなど大半の製品ペアで、PBMAが高くなると、世帯はより手頃な動物由来肉を多く購入する傾向があった。研究者によれば、この傾向は定着した消費者にも当てはまる可能性があり、もともと比較的高価なPBMAがさらに値上がりすると、世帯が動物由来製品を選ぶようになることを示唆する。
ベーコン類のように、一部の製品ペアは代替関係ではなく補完関係にあり、世帯は両方を一緒に購入する傾向があった。そのためPBMAが値上がりすると、動物由来版の購入も減った。研究者は、これはフレキシタリアン消費者の習慣を反映している可能性があると指摘する。
研究のシミュレーションによれば、PBMAの価格を10%引き下げると、製品によって差はあるものの需要は少なくとも6%増え、動物由来肉の需要減少は最大でも5%にとどまる。PBMAの牛肉風ミートボール、調理済み家禽肉、ランチミートは最も大きく増え、10%を超える伸びとなる。一つのPBMA製品を値下げすると、他のPBMA製品の需要も増える可能性がある。例えば、植物由来ランチミートが安くなると、植物由来ベーコン、ビーフパティー、牛ひき肉風製品など複数カテゴリーの需要が高まる。
本研究は2019年から2021年のデータに基づくため、特にPBMAの新製品が急速に開発されている現状を踏まえると、現在の市場について推論するには限界がある。また、データは家庭内消費向けの購入だけを含み、レストラン、職場、その他の場所での購入は対象外である。さらに、分析は個々の食事での実際の代替ではなく、価格に対する需要の変化を比較している。つまり、特定のPBMA購入が特定の動物由来肉購入を直接置き換えたかどうかは判断できない。最後に、本研究が測定したのは食肉製品の需要だけであり、豆類、レンズ豆、豆腐などの植物性食品への移行は測定していない。
消費者の認知が高まり、動物福祉、環境、健康におけるPBMAの利点が認識されているにもかかわらず、これらの製品は動物由来肉の需要を大きく減らしてはいない。PBMAが世帯の食肉購入に占める割合は小さく、その一因は価格の高さと経済的制約への敏感さにある。このため、PBMAは現在、動物由来肉に広く普及した代替品というより、主としてニッチな製品として機能しており、代替品となるものもあれば補完品となるものもある。これらの結果は、PBMAの普及を促す取り組みでは、製品をより手頃で魅力的なものにすることを優先すべきだと示唆する。ただし、PBMAの値下げだけでは動物由来肉の需要に与える効果は限定的である可能性があるため、啓発者はPBMAの普及改善策と、動物性食品の需要を減らすための別の戦略を組み合わせる必要がある。
※本記事はこの記事の最下部にある論文のFaunalyticsのリサーチャーによる要約を、同団体の許可を得て翻訳したものです。
原文タイトル:Disaggregated Substitution Patterns Between Plant-Based and Animal Meats: Evidence From U.S. Household Purchases
論文著者:Nouve, Y., Zheng, Y., Zhao, S., Kaiser, H. M., & Dong, D.
公開日: 2025/09/28

