論文概要
アニマルウェルフェアに対する消費者の関心は、現在のところ、動物たちに配慮した製品の市場シェアには十分に反映されていない。一般的にこうした製品のマーケティング戦略においては、アニマルウェルフェアのように持続可能性に関する利益が強調されるが、これまでの研究によれば、消費者はそれよりも味や好奇心のように自分自身に個人的に関係のある利益を優先することが示されている。
本研究では、現実の購入時点の状況を模した実験で、個人的に関連する利益-好奇心-を強調したポジショニング戦略*1 が有効であるかを検証し、さらに認証ラベルの効果や肉食に対する消費者の態度による影響も測定した。オランダの大学生101人を対象に実験的競売(オークション)を実施し、鶏肉を使った昼食への支払意思額*(willingness to pay, WTP)を測定した。
その結果、ポジショニング戦略と認証ラベルは、いずれも消費者のWTPを有意に増加させ、両方の要素が存在する場合に最も高いWTPが発生することが示された(両者の間で交互作用の効果はなかった)。このことから、企業がウェルフェアに配慮した食肉の売上を最大化するためには、個人的に関連する利益を強調したポジショニング戦略と、動物への配慮を裏付ける認証ラベルを組み合わせる必要がある。また、食肉に対して相反する感情を持つ消費者は、このような戦略に反応しにくかったことから、食肉消費がもたらす負の影響に関する啓発キャンペーンの企画においては若干の注意が必要である。
*1 商品の位置づけをし、差別化することで、消費者に好ましい認識を作り出して売上へとつなげる戦略 *2 商品やサービスに対して消費者が最大限支払っても良いと思う金額
Lenka van Riemsdijk, Paul T M Ingenbleek, Hans C M van Trijp, Gerrita van der Veen
2023/10/30
Can marketing increase willingness to pay for welfare-enhanced chicken meat? Evidence from experimental auctions