論文概要
生きた魚を求める需要は世界中で大きく、なかでも中国では品質に関する基準が消費者の嗜好とも一致している。ケニアでは特に水産養殖の盛んな地域において、生きた魚についての議論は焦点となっているが、魚を輸送する手段が体系的に定められていないことが関係者にとっての課題となっている。本研究では、ケニアにおいて魚の養殖や輸送にかかわる利害関係者の態度と認識を調査し、輸送のための手段や関連する業界が抱える課題を明らかにする。
記述的研究デザインにおける一次データの収集は、国内の様々な利害関係者を対象として、生きた魚の輸送に関する知識や認識、態度についてのアンケート調査によって行った。調査の結果からは、ケニアにおける魚の輸送手段には目的や距離によって様々なパターンがあることが明らかになった。その割合は、自家用車の利用が26.3%と突出しており、なかでもニャンザとモンバサが35%で最も高かった。改造バンは中部ナイロビと西部で多く(25%と22.5%)、公共交通機関も広く利用されており、特に中部とナイロビで高い割合だった(25%)生きた魚を運搬するための専用車両は、西部とニャンザにおいて主流となっていた(20%と17.5%)。ロブスターやカニなどの甲殻類は、主に沿岸部から(海運で)輸出されていた(27.5%)。
参加者による自己評価では、生きた魚の輸送に関する自らの知識は中程度であり、魚の福祉について基本的な理解はあるとされていた。(参加者の回答からの)フィードバックによれば、ケニアでは生きた魚の輸送には、密閉タンクやビニール袋、専用車両の利用が一般的であるが、輸送中の温度と酸素の変動は、すべての地域、特にモンバサとキスムにおいて大きな課題となっている。麻酔薬の使用については、特に食用魚に関しては、あまり報告されていない。
今回の調査では、生きた魚の輸送と福祉について関係者が前向きな認識を持っていることが明らかになり、早期に導入される可能性が示唆された。ケニアにおいて魚の輸送に関わる産業部門と魚の福祉について持続可能性を高めるためには、今後の研究では、魚の福祉・最適な管理体制・技術の進歩・学際的観点からの検証などに関してさらに検討していく必要がある。
Syanya, F. J.; Mathia, W. M.; Mumina, P.; Litabas, J. A.; Sifuna, C.
2024/02/14
Aqua perspectives: stakeholder attitudes and perceptions in live fish transportation practices within the Kenyan fisheries sector