論文概要
動物に対する人間の優越性を強く信じている人々は、一般に動物に対する道徳的関心が低い傾向にある。しかし、さまざまに異なる種類の動物に関して人々がどう考えるかは、社会における動物の役割にも左右される。例えば、コンパニオンアニマルに比べると、食用動物に対する人々の関心は薄い。しかし、動物の種類によるこのような道徳的分断に対して人間至上主義の信念がどのように関わっているのかは不明である。
英国の成人を対象として2件の調査(196名・256名)を実施し、コンパニオンアニマルのようにステータスの高い動物と、食用動物のようにステータスの低い動物の間にある道徳的分断の認識について、人間至上主義の信念との関連があるかどうかを検証した。2つの研究において参加者は、さまざまに異なる種類の動物に対して、どの程度に道徳的配慮を示す義務があると感じるかを7段階評価で評定し、人間至上主義の信念を評価するための質問票に回答した。
予想されたように、参加者が必要と感じる道徳的配慮は、コンパニオンアニマル(犬や猫など)や魅力的な野生動物(イルカやチンパンジーなど)に対して強く、食用動物(豚や七面鳥など)や魅力的でない野生動物(カエルやコウモリなど)よりも強いことが明らかになった。最も重要な点として、ステータスの高い動物と低い動物の間にあるこの道徳的分断の程度は、人間至上主義を強く信じている人において有意に大きく、我々の仮説を裏付けるものであった。さらに、人間至上主義によるこうした効果は、性別・年齢・食習慣・社会的支配志向性*による影響を除外しても有意であった。
これらの結果から、動物に対する人間の優越性に関する信念は、人間と動物の間に存在するヒエラルキーを維持するだけでなく、異なる動物の間のヒエラルキーにおいてより大きな分断を維持し、正当化する戦略として作用している可能性がある。
* 集団間の格差や序列を好む程度を表す概念
Victoria C. Krings, Kristof Dhont, Alina Salmen
2021/06/03
The Moral Divide Between High- and Low-Status Animals: The Role of Human Supremacy Beliefs