論文概要
肉ベースの食事は大量の炭素を排出するため(炭素集約的)、パリ協定の気候目標とは相容れない。気候変動を緩和するためには、肉の消費を減らすことが不可欠である。行動のナッジ*は、人々に組織化・構造化された選択肢を提示する手法で、食肉需要を削減するために利用されつつあるが、その規模を拡大する際には倫理的な課題や限界に直面する。
本研究では、ナッジの後で人々に内省を促すことによってナッジの効果が向上するかどうかを検証する。ドイツの大学のカフェテリアで、5週間にわたる無作為比較試験を実施した(参加者129名、計645食)。第1週目はベースラインの食行動を測定し、2週目にはカフェテリアでラベリング・ナッジを導入した(メニューや会計でプラントベース食を緑色のラベルで表示)。続いて第3・4週には参加者を以下の3つの実験条件に無作為に割り当てた: 1.ラベリング・ナッジのみを引き続き受ける対照群、2.ラベリング・ナッジを受け、かつナッジについて考える機会を持つ介入群(ナッジ+1)、3.ラベリング・ナッジを受け、かつ自分の好みについて考える機会を持つ介入群(ナッジ+2)。5週目にはこれらの操作をすべて中止した。
第2週から第4週までをまとめたデータでは、ラベリング・ナッジは(期間全体を通じた)肉の需要の大きな変化とは関連していなかった。しかし、ナッジのみに比べると、内省を促すことによって肉の需要は有意に減少した。すなわち、ナッジ+1では、肉ベースの料理を選ぶ機会が5%減少し、ナッジ+2では7%減少した。これらの効果は介入を中止すると減衰した。内省とナッジングを組み合わせることにより、少なくとも短期的には持続可能な食行動の改善が可能である。
*行動科学の手法で、経済的なインセンティブや明示的な行動の強制なしに、無意識に働きかけて行動変容を促す
Philipp Thamer, Sanchayan Banerjee, Peter John
2023/09/14
Pledging After Nudging Improves Uptake of Plant-based Diets: a Field Experiment in a German University Cafeteria