論文概要
畜産動物のウェルフェアについて議論されることが増えてきた。しかし、動物に配慮した製品は、食肉消費の全体に対してはごく一部にとどまっている。本研究では、バーチャル・スーパーマーケットにおいて、畜産システムについてより詳細な情報を提供することが消費者の商品選択に影響するかどうかを調査した。
参加者(124名)は、3つの実験条件のいずれかに無作為に割り当てられ、各条件において提供される情報は以下のように異なっていた: 1.アニマルウェルフェアについてのラベル表示のみ(対照条件)、2.アニマルウェルフェアについてのラベル表示に加え、平飼いによる有機的な飼育システムについて説明したポジティブ・ビデオ(ポジティブ・ビデオ条件)、3.アニマルウェルフェアについてのラベル表示、ポジティブ・ビデオ、従来型の飼育システムについて説明したネガティブ・ビデオ(ポジティブ&ネガティブ・ビデオ条件)。いずれの条件においても、3種類の異なる製品(従来の鶏胸肉・平飼い鶏胸肉・鶏肉に似たプラントベース代替肉)を参加者に提示し、カレー料理の材料としてどれか1つを選択することを求めた。
その結果、参加者の商品選択には3つの条件間で有意な差は見られなかった。参加者の視線の動きを追跡したデータからは、アニマルウェルフェアに関する情報にほとんど注意が払われていないことがわかった。参加者の購買選択において最も重要な情報となっていたのは価格であった。また、肉食を正当化しようとする参加者の態度は、アニマルウェルフェアについてより高い基準のもとで生産された製品を選ぶ傾向とは負の相関があり、肉食を正当化する傾向が強いほど、アニマルウェルフェアの基準が高い製品を選択しない傾向があった。
これらの結果は、アニマルウェルフェアや畜産動物の飼育環境に関して詳しい情報を提供するだけでは、消費者の食肉購買行動に大きな変化をもたらすには不十分であることを示している。消費者の購買決定において重要な役割を果たしているのは、商品の価格であり、肉食を正当化する参加者の戦略である。
Chengyan Xu, Christina Hartmann, Michael Siegrist
2023/06/21
The impact of information about animal husbandry systems on consumers’ choice of meat products in a virtual supermarket