論文概要
人々は当然のこととしてヒトが他の動物よりも道徳的に優位にあるものと考えている。道徳的判断におけるこのような人間中心主義は、ヒトと動物との間に認められる知的能力の差に基づくものなのだろうか、あるいは単にヒトが自分と同じ生物種のメンバーを好むからなのだろうか? 我々は6つの研究(参加者2217人)においてこの問題を検証した。
その結果、ほとんどの参加者は、動物が人間と同等かそれ以上の知的能力を持っていると説明された場合であっても、動物よりも人間を優先することがわかった。このような傾向は、特定の個体が持っている知的能力に関して検証した場合(研究1a-b)と、それぞれの種における一般的な知的能力に関して検証した場合(研究2)のいずれでも見られた。このように、道徳における人間中心主義の主な動機となっている要因は、単にヒトという種のメンバーとして所属していることにあった(種差別主義)。
しかし、他の条件がすべて同じであっても、参加者はより高い知的能力を持つ個体に道徳的な重みを置いており(個体の知的能力に基づく原則)、このことは、ヒトを道徳的に優先させる理由の一部には、人間が動物よりも高い知的能力を持つという信念があることを示唆している。注目すべきは、人間よりも動物に関してその知的能力が重要であると考えられていたことであり、このような傾向そのものもまた種差別的なものと考えられる。
さらに、種差別を助長する可能性のある下位要因についても検討した。多くの参加者は、(人間だけでなく)すべての生物の個体は、他の種よりも自分と同じ種のメンバーを優先すべきだと判断していることがわかった(種相対主義、研究3a-b)。しかし、一部の参加者では、人間を絶対的な意味で優れた価値を持つものとみなす傾向も見られた(人間中心の種絶対主義、研究3-4)。
我々の研究結果は全体として、道徳的判断における人間中心主義を説明する上では種差別が中心的な役割を果たしていること、また種差別そのものもまた多数の下位要因に分類できる可能性があることを示している。
Lucius Caviola, Stefan Schubert, Guy Kahane, Nadira S. Faber
2022/05/12
Humans first: Why people value animals less than humans