論文概要
背景・目的: プラントベースの食事パターンは、米国における心血管疾患、一部のがん、これに関連した死亡リスクの低下と関わっているとされてきた。
集団: プラントベースの食生活と死亡率の関連については、その食品の品質が考慮されることはこれまでほとんどなく、特に人種や民族的背景が様々に異なる場合には検証されてこなかった。本研究では、プラントベースの食事パターンへの遵守度およびプラントベース食品の健康性が、全死因・心血管疾患・がんによる死亡率と関連しているかについて調査するとともに、その関連が人種や民族によってどのように異なるかを検討した。
方法: 調査対象となったのは合計 144,729人で、多民族コホート研究 Multiethnic Cohort Study(1993~2019年)に参加したアフリカ系アメリカ人・日系アメリカ人・ラテン系アメリカ人・ハワイ先住民・白人の男女が含まれる。プラントベース食に関する3種類のスコア(プラントベース食総合指数 overall plant-based diet index (PDI)、健康的なプラントベース食指数healthful plant-based diet index (hPDI)、不健康なプラントベース食指数 unhealthful plant-based diet index (uPDI))について、五分位を比較した全死因・心血管疾患・がんによる死亡率のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)をCoxモデルによって推定した。
結果: 追跡期間は平均21年間で、65,087例の死亡が確認された。このうち、心血管疾患による死亡は18,663例、がんによる死亡は16,171例であった。最高五分位と最低五分位を比較すると、PDI と hPDI のスコアが高いほど、全死因による死亡リスクは男性で低下しており(PDI: HR = 0.85、95%CI:0.82-0. 89、hPDI : HR=0.88、95%CI:0.85-0.91、低下傾向に関する P<0.0001)、女性でも同じく低下していた(PDI : HR=0.89、95%CI:0.86-0.93、hPDI: HR=0.86、95%CI:0.83-0.89、低下傾向に関する P<0.0001)。uPDI に関連した全死因による死亡リスクは女性でのみ増加していた(HR = 1.11、95%CI:1.07-1.15、増加傾向に関する P <0.0001;性差に関する P = 0.019)。
同様の傾向は、心血管疾患による死亡率についても見られ、男女ともuPDIに関連したリスクは有意に増加していた。PDI は、男性においてがんによる死亡リスクの低下と関連していたが(HR = 0.86、95%CI:0.80-0.92、低下傾向に関する P <0.0001)、hPDI および uPDIでは、男女のいずれでもそのような関連は見られなかった。男女それぞれについて、他の人種および民族グループと比較した場合、uPDI と全死因死亡率との関連は、白人男性で強く(人種・民族による異質性に関する P = 0.009)、ラテン系女性では弱かった(異質性に関する P = 0.002)。
結論: プラントベース食品の質を重視した健康的なプラントベース食は、男女ともに全死因死亡リスクおよび心血管疾患による死亡リスクの低下と関連していたが、その関連性の大きさは人種や民族によって異なっていた。
Jihye Kim, Lynne R Wilkens, Christopher A Haiman, Loïc Le Marchand, Song-Yi Park
2024/04/29
Plant-based dietary patterns and mortality from all causes, cardiovascular disease, and cancer: The Multiethnic Cohort Study