論文概要
高所得国において人々の食生活をプラントベース食へと転換させることは、自然環境を保護し、公衆衛生を向上させることにつながる。これまでに他の分野で行われた研究によれば、人々が意思決定を行う環境を物理的に変えることが(”ナッジ”)、社会的に望ましい行動変容を達成するうえで有望である。ここでは、1年間にわたる観察と実験による大規模なフィールド調査において、ベジタリアン食の割合を増やすことで人々の食事選択を誘導する試みについて検証する。
2017年に英国の大学の3つのカフェテリアにおいて購入された94,644食について、匿名化された個人レベルのデータを収集した。各店舗においてベジタリアン食の割合を25%から50%に倍増させたところ(例えば、メニュー全体におけるベジタリアン食の割合を1:4から1:2とする)、ベジタリアン食の売上高は増加し(=肉料理の売上高は減少)、売上全体に占めるその割合としては、観察研究を行ったカフェテリア2店舗では14.9%と14.5%、実験研究を行った1店舗では7.8%の増加であった。これは、ベジタリアン食自体の売上高としては、メニューの変更前に比べてそれぞれ61.8%、78.8%、40.8%の増加があったことを意味する。
売上データと参加者の食事購入履歴をリンクさせたところ、最も大きな効果が見られたのは、ベジタリアン食の選択率が最も低い4分の1のグループであった。さらに、ベジタリアン食の選択肢を増やしても全体の売上にはほとんど影響せず、リバウンド効果も見られなかった。ベジタリアン食の売上は、他の食事時間帯においても減少していなかった。
これらの研究結果の頑健性は高く、食事提供の方法を単純に変更するだけで、社会集団のレベルでより持続可能な食生活を実現できる可能性があることを示している。
Emma E. Garnett, Andrew Balmford, Chris Sandbrook, Mark A. Pilling, and Theresa M. Marteau
2019/09/30
Impact of increasing vegetarian availability on meal selection and sales in cafeterias.