論文概要
倫理的な問題や環境問題への懸念から肉を食べるのを控える人が増えている。しかし、こうした人々にとっては、自分自身は肉を控えていても、飼っているペットが雑食性や肉食性のこともあるため、ここに「ベジタリアンのジレンマ」が生じている。肉の消費を減らしている人々の中には、コンパニオンアニマルにもプラントベースの食事を与えている人もいるが、こうした選択をしない人もいる。
ここで第三の可能性となるのは培養肉であるが、ペットフードに培養肉を使うことを消費者がどのように捉えているか、学術的にはこれまでほとんど注目されてこなかった。本研究では、コンパニオンアニマルに培養肉を与えることに関する消費者の意向を分析するため、729名の回答者から調査データを収集し、特に回答者の現在の食習慣がどのようなものか、また自ら培養肉を食べる意思があるかどうかを含めて分析した。
自ら培養肉を食べる意思のある回答者では、全員ではないものの、その大部分は培養肉をコンパニオンアニマルにも与える意思を示した(81.4%、193/237)。しかし、培養肉を食べるつもりがない人々に関してはより複雑であった。すなわち、肉を食べる回答者では、培養肉を食べる意思のある人の割合は40.3%(198/491名)で、これに対してヴィーガン・ベジタリアンの回答者ではその割合はより低く、16.4%(39/238名)となっていた。しかし、ヴィーガン・ベジタリアンで培養肉を食べる意思がない回答者では、その過半数でペットには培養肉を食べさせる意思があった(55.9%、86/154人)。肉を食べる回答者のうち、自分では培養肉を食べるつもりはないが、ペットには食べさせたいとした人はごく少数であった(9.6%、11/114人)。
従って、ペットフードとしての培養肉の潜在的市場は、人間のための潜在的市場とは著しく異なると考えられる。ペットに培養肉を与えることに関して回答者が挙げた主な問題点は、培養肉は健康に良くないのではないかという懸念であったことから、安全性や栄養面で優れていることに関するメッセージングを用いれば培養肉を使ったペットフードの普及を容易に推進できる可能性がある。
Alice Oven, Barbara Yoxon, Josh Milburn
2022/12/30
Investigating the market for cultivated meat as pet food: A survey analysis