論文概要
これまでの多くの研究から、暴力的な抗議行動に訴える形の社会運動は人々の支持を得られないことがわかっている。しかし、例えば交通を妨害することのように、平和的ではあるが破壊的な抗議行動に関しても同じことが言えるどうかについてはほとんど検討されていない。
事前登録された2つの実験的研究では、ニュース記事でヴィーガンの抗議行動が社会的混乱を引き起こすものとして描写された場合、人々の態度がヴィーガニズムに対して否定的になるかどうかを調査するため、破壊的でない抗議行動、または対照条件を用いて比較した。研究1では、オーストラリアおよびイギリスの居住者を合わせたサンプル(449人・平均年齢 24.7歳)、研究2では、オーストラリアの大学生(934名・平均年齢 19.8歳)を対象とした。
研究1 の結果から、破壊的な抗議行動はヴィーガンに対する否定的な見方と関連があることがわかったが、これは女性の参加者のみで見られた傾向であった。研究2 では、このような関連は見られなかった。一方、抗議行動の主張に関する主効果(ヴィーガンとファストファッションの比較)は有意であったが、抗議行動のタイプによる主効果(破壊的な行動と破壊的でない行動の比較)は有意ではなかった。すなわち、対照条件の抗議行動と比べると、ヴィーガンの抗議行動は破壊的であるかどうかに関わらず、記事として読まれた場合、ヴィーガンに対する見方は悪化し、肉を食べることは自然であり、必要であり、普通であるとして擁護する傾向が強くなった。
このような効果は、抗議行動に参加する人々には道徳性が欠けていると認識されること、さらにこうした人々との一体感が低下することに起因していた。2つの研究において、抗議行動に参加する人々に対する見方は、行動が国内で行われるか、海外で行われるかで違いはなかった。今回の結果からは、ヴィーガンの抗議行動は、いかに平和的なものであるとしても、それが記事として描写された場合には、この運動に対する人々の見方は悪化すると考えられる。今後の研究では、ヴィーガンの主張を他の形で掲げることによって社会からの否定的な反応を改善できるかどうかを検討する必要がある。
Rachel E. Menzies, Matthew B. Ruby, Ilan Dar-Nimrod
2023/04/13
The vegan dilemma: Do peaceful protests worsen attitudes to veganism?