論文概要
ヴィーガンの食事スタイルは一般の人々の間で広がり続けており、今後はアスリートの間でもこのような変化が起こる可能性が高いため、アスリートのパフォーマンスや適応力、回復力に対する潜在的な影響を検証することが重要となる。
アスリートの栄養摂取において考慮する必要があるのは、エネルギー・主要栄養素・微量栄養素の摂取量を最適化すること、さらに場合によっては、トレーニングやパフォーマンスの目標を達成できるように個々のアスリートに望ましい栄養補助食品を選択することである。アスリートにとって最適な栄養摂取のあり方はこのようなものであり、このレビューでは、これに対してヴィーガン食を採用した場合の影響を検証し、エビデンスに基づきながら栄養摂取に関する実践的な推奨事項について検討する。
現在のエビデンスからは、ヴィーガンタイプの食事によってアスリートのパフォーマンス、適応力や回復力が高まるとは言えないものの、それと同時に、ヴィーガンに近い食生活をアスリートが採用しても特に問題はないことも示唆されている。しかし、明確に注意する必要があるのは、ヴィーガン食を無計画に進めた場合、主要栄養素の摂取量を最適化できない可能性があることであり、これは特に食事に含まれるタンパク質や一部の微量栄養素(鉄・カルシウム・ビタミンB12・ビタミンDなど)の含有量やその質に関して重要である。
そのため、ヴィーガン食によるスポーツ栄養を最適化するためには、その内容を慎重に検討・評価し、計画を立てる必要がある。ヴィーガン食を計画・採用する際には、とりわけアスリート個人や時季に合わせた目標設定、トレーニングの方法、アスリートのタイプ(持久力系・パワー系・チーム系など)や感覚・文化・倫理に関する選好などの要因をすべて考慮する必要がある。
Sam West, Alistair J Monteyne, Ino van der Heijden, Francis B Stephens, Benjamin T Wall
2023/04/29
Nutritional Considerations for the Vegan Athlete