論文概要
畜産におけるアニマルウェルフェアは消費者にとって大きな関心のある問題である。有機農場のアプローチでは、(疾病や傷害に対する)予防措置においてアニマルウェルフェアを確保することを目指しているが、有機農場と従来型の農場におけるアニマルウェルフェアの現状を比較した科学的研究はきわめて乏しい。また、これまでに行われた研究の多くは、主に健康問題など、アニマルウェルフェアの特定の側面に焦点を当てたものである。そこで本研究では、乳牛の福祉に対して酪農システムが及ぼす影響について、より総合的に調査することを目的とした。研究はドイツの2つの連邦州で実施されたが、その結果はドイツ全国においても適切なモデルとして利用できる。
乳牛の福祉の測定にはWelfare Quality評価プロトコル(Welfare Quality® 2009年)を使用した。その結果、有機農場と従来農場の間には有意差があったが(P < 0.05)、同じ農業システムを採用している中で比較しても、個々の農場によって大きなばらつきが見られた。有機農場は、Welfare Quality®の4つの原則-「良好な飼養」・「良好な住居」・「良好な健康」・「適切な行動」-のすべてにおいて、従来農場に比べてより高いスコアを示した。
特に、Welfare Quality®のうち「安静時の快適性」は、歩行困難の発症率を低減させることに関わる指標であるが、有機農場のスコアはこの項目においても従来農場に比べて高かった。有機農場ではまた、より苦痛の少ない除蹄方法を実施するか、あるいは実際に除蹄を実施することなく、放牧地や屋外での運動へのアクセスが提供されていた。
しかし、特に動物の健康に関して、有機農場にはさらに改善の余地がある。欧州における有機生産に関する現行の規制は、(実施している予防措置など)農場側の行動内容に関するものに限られているが、それらの成果に関する評価項目をさらに加えることで、アニマルウェルフェアのうち健康に関する側面を保証する必要がある。
K. Wagner, J. Brinkmann, A. Bergschmidt, C. Renziehausen, S. March
2021/07/07
The Effects of Farming Systems (Organic vs. Conventional) on Dairy Cow Welfare, Based on the Welfare Quality? Protocol