論文概要
畜産業を持続可能な形で移行させることは、国際的および国内的な規制政策における課題となっている。これまで政治的な議論においては、アニマルウェルフェアを強化したり温室効果ガス排出を削減したりするために、生産や管理の方法をどのように変えるかに焦点が置かれてきた。しかし、畜産動物の頭数に関する問題は、これまで検討されてこなかった。これはとりわけ、これからの社会において受け入れられる畜産動物の頭数はどのようなものかという問題について該当する。
そこで本研究では、畜産を持続可能な形で移行させるうえで将来の畜産動物の頭数をどうするべきか、市民の考え方について調査し、それが消費者としての立場と整合しているかどうかを検証した。研究の対象は、2021年1月・2月に実施したオンライン調査に参加したドイツ人1030名である。潜在的プロファイル分析では、「現状維持派」(49.0%)と「持続可能な移行の推進派」(51.0%)の2つのグループが特定され、両者の間では将来の畜産動物の頭数の変化に対する認識が異なっていた。
現状維持を支持する人々は、畜産には持続可能性の面で問題があることを認識していたが、自ら畜産物の消費を改めて移行を支援することにはあまり関心を持っていなかった。持続可能な移行の推進を支持する人々は、畜産動物の数を減らすことが畜産業にとって実行可能な行程であると考えており、それに応じて消費行動を適応させることを望んでいた。
畜産動物の数を減らすことを含め、畜産業が社会的に受け入れられるような移行を実現するためには、農家への財政的支援・情報提供・ナッジ*・市場側への課税など、プッシュ型・プル型の政策措置を組み合わせて移行を支援する必要がある。
* 行動科学において、経済的なインセンティブや明示的な行動の強制なしに、無意識に働きかけて行動変容を促す手法
Maureen Schulze, Winnie Sonntag, Marie von Meyer-Höfer
2023/01/26
Is less more? Investigating citizen and consumer preferences for the future direction of livestock farming policy