論文概要
動物に由来する食品の消費を削減することで、関連する外部費用*1(コスト)を削減できる可能性がある。しかし、その削減の効果はいまだ十分に解明されていない。ここでは、ライフサイクル・アセスメント*2 の原理とマネタイゼーションの要素を組み合わせて、食料生産が環境に及ぼす影響のために人間の健康と生態系に発生するダメージについて、その金額的な規模を推定する。
その結果、世界全体では、2018 年に食品のために支出された1 ドルにつき、生産関連の外部コストとして約 2ドルが組み込まれており、これは14 兆ドルの外部性*3 に相当することが明らかになった。動物性食品からの食生活の転換は、こうした「隠れた」コストを大幅に削減し、炭素排出を抑制すると同時に、食品生産に関連した健康への負荷と生態系の破壊によるコストを最大で7兆3,000億ドル相当削減することができる。
食生活の変化による健康への影響について、食品の消費と生産の面から行った比較では、(従来のように)食品生産に関連するコストが考慮されない場合、プラントベースの食生活がもたらす便益が過小評価されることがわかった。
我々の分析の結果からは、食生活の変化、特に高所得国および高中所得国における変化は、気候変動を緩和すると同時に社会経済的な便益をもたらす可能性が大きいことが明らかになった。
*1 生産者が自ら負担することのない費用外部性 *2 製品・サービスの製造・生産から廃棄・リサイクルまでのライフサイクルを細分化し、環境負荷を定量的に評価する手法 *3 ある経済主体の活動が、その活動とは直接的関係がない他の主体や社会の便益や費用などを発生させること(非営利用語辞典より抜粋)
Elysia Lucas, Miao Guo, Gonzalo Guillén-Gosálbez
2023/05/15
Low-carbon diets can reduce global ecological and health costs