論文概要
食品ロスは、食料安全保障と環境の持続可能性を損なうものとして広く認識されている。しかし、生産過程で大量の資源を必要とする食品を消費することもまた、より効率的で同等の栄養価を持つ代替食品の消費と比較すれば、実質的な食品ロスと考えることができる。本研究では、(タンパク質含有量などにおいて)栄養学的に同等なプラントベース代替食品ではなく、大量の資源を必要とする動物由来の食品を消費することに伴う食品ロスを、このような意味での機会損失としての食品ロスと捉えて定量化した。
米国における主要な動物性食品(牛肉・豚肉・乳製品・鶏肉・卵)のそれぞれについて、農地利用を最小化できる代替食品と比較した。その結果、小売から消費者への従来のサプライチェーンに特徴的な食品ロスは、プラントベース食品と動物性食品でいずれも約30% であるのに対し、牛肉・豚肉・乳製品・鶏肉・卵における機会食品ロスは、それぞれ 96%、90%、75%、50%、40% であることが明らかになった。動物性食品のうち、最も資源を必要とするのは牛肉で、最も資源を必要としないのは卵であるが、これらに比べて植物由来の代替食品であれば1耕作地あたりでそれぞれ20倍および2倍の栄養学的に同等の食品を生産できるため、このような食品ロスが発生していた、
従来の食品ロスと機会損失はともに改善の対象となるが、機会損失が大きいということは、従来の定義に基づく食品ロスを上回る、より大きな節約の可能性があることを強く示している。もし米国の食事に含まれるすべての動物性食品をプラントベース代替食品に同時に置き換えるとすれば、現在の総人口に加えてさらに3 億 5,000 万人の追加人口を完全に養うのに十分な食糧が得られる。これらの結果は、食糧の入手可能性と安全保障の向上のために食生活の転換が重要であることを強く示唆している。
Alon Shepon, Gidon Eshel, Elad Noor, Ron Milo
2018/03/26
The opportunity cost of animal based diets exceeds all food losses