論文概要
食肉の過剰摂取が有害な温室効果ガスの排出につながることは明白である。このような気候変動への影響に対処するために現実的な方法の一つとして、培養肉のように、より持続可能性の高い食生活の選択へと人々の理解を促すことがある。しかし、実際に肉を食べる習慣を改める方向へ人々を動かすことは困難でもあり、培養肉に対する消費者の購買意欲の心理的要因についての実証的研究が進められている。
これまでの研究では、心理的幸福感が食品消費の意味づけに関わっていることが示唆されており、幸福感の高い人ほど、食品消費によって栄養補給のニーズを満たすだけでなく、食品消費に関わる社会文化的な利益をよく認識していることがわかっている。しかし、新しい食品を消費することと幸福感の関わりについては未だ不明であるため、本研究ではこのギャップを埋めるべく、さまざまな理由で培養肉を消費する意欲と、心理的幸福感の間にある関係を検証することにした。
本研究では、シンガポールの成人948人を対象として、オンライン調査を実施し、人々の心理的幸福感と培養肉に対する消費意欲の間に正の相関関係があることを初めて実証した。また、培養肉は本物の肉と同じく健康的で栄養価が高く、安全かつ感覚的な特性も同等であり、社会に対しても有益であることが認識されると、培養肉に対する消費意欲はさらに高まった。
本研究は、消費者の幸福感と培養肉に対する受容態度には正の相関関係があること、これには培養代替肉による将来的な利益に対する認識が反映されていることを明らかにし、培養肉の消費者受容に関して発展する当該研究領域に新たな知見を加える。