論文概要
健康的で高品質の畜産物に対する需要が高まる一方で、畜産の過程においてもアニマルウェルフェアと持続可能性に配慮した、より倫理的な方法を用いることに社会的な関心が集まっている。採卵鶏のオスの初生雛を殺処分することは、ケージの使用とともに養鶏業におけるアニマルウェルフェアの大きな問題のひとつであり、これは社会における意識の変化とも関連している。養鶏業におけるこの慣行は政治的にも社会的にも支持されていないため、オスの初生雛の殺処分に代わる方法が検討されているが、これにはオスの雛を飼育することや、卵肉兼用種の使用、胚の雌雄を体外で鑑別する方法などがある。
このレビューでは、殺処分を代替する方法に関する研究の現状を概観し、こうしたアプローチに関する社会意識の現状をまとめた。体外での雌雄鑑別の技術に関しては、ここ数十年で遺伝学・光学・生物学・物理化学・バイオテクノロジーなどによるアプローチが発表されてきた。代替手段の選択において主に考慮されるのは、アニマルウェルフェア、コスト、倫理面の問題、消費者に受け入れられるかどうかである。
卵肉兼用種の飼育や採卵鶏のオスを肉用鶏として育てることは、代替手法としては社会的に非常に受け入れられやすいが、生産コストがきわめて高いことから、一般大衆向けの市場には適していない。現在の知見によれば、体外での雌雄鑑別は、オス雛の殺処分を代替できる可能性が高い方法であり、特に孵卵の最初の数日間に行えば、消費者に最も受け入れられやすいものと思われる。
しかし、商業的に利用可能な技術はすべて胚発生の後期にしか使えないため、いまだ大規模に利用できる状況には至っていない。従って、雌雄を胚発生の早期に卵内で非侵襲的かつ迅速に鑑別する技術のコストを下げ、倫理的に受け入れられるものとすることは、依然として優先度の高い重要な課題である。さらに、遺伝学的手法を用いることがもたらす潜在的な便益とリスクに関して、より包括的な視点から議論が必要である。
Francesca Coppola, Gisella Paci, Matteo Profeti, Simone Mancini
2023/12/04
Stop culling male layer-type chick: an overview of the alternatives and public perspective