論文概要
肉や乳製品の摂取量を減らすことは、食糧システムが環境に及ぼしている大きな影響―気候変動、土地利用の変化に伴う生物多様性の損失、淡水の利用など―を緩和するために必要な戦略であると認識されている。肉や牛乳を代替する製品を消費者が選択できるようにすることでプラントベースの食生活への移行を推進できるが、その一方で、栄養や健康への影響に対する懸念、コストの高さなどがこれらの消費を妨げる可能性がある。
ここでは、高所得国に焦点を当て、肉・牛乳の代替製品24品目について、栄養・健康・環境・コストの分析を統合した多基準アセスメントを実施した。エンドウ豆・大豆・豆類などの未加工のプラントベース食品は、(栄養・健康・環境・コストの)全ての領域において最も高いスコアを示した。一方、ベジ・バーガーなど加工済のプラントベース製品・テンペなど従来の代替肉製品・植物性のミルクでは、未加工のプラントベース製品に比べると気候変動へのメリットは小さく、コストは高かったが、それでも動物性食品に比べれば環境・健康・栄養の面で得られるメリットは大きかった。
これらの研究結果は、既存のさまざまなプラントベース製品によって現代の食生活から肉や乳製品を置き換えれば、栄養の不均衡・食生活のリスクや死亡率・環境資源の使用や汚染の低減など、多くのメリットがあること、さらに加工製品よりも未加工製品を選べば食事にかかるコストも削減できることを示唆している。この知見は、こうした製品の摂取の推進を目的とした公共政策や企業イニシアティブの裏付けとなるものである。
Marco Springmann
2024/12/02
A multicriteria analysis of meat and milk alternatives from nutritional, health, environmental, and cost perspectives