論文概要
地球環境に関する諸課題への責任と、それに対する脆弱性は、各国において一様な形で存在するわけではない。ブラジルでは食肉は文化的に重要な価値を担っており、このことは、たとえ食肉の生産が環境面で負の影響を与えているとしても変わりはない。本研究では、食における格差と公正の観点から、ブラジルにおける食肉消費量を所得階層別に経時的に調査するとともに、環境に与える影響を分析した。
2008年と2017年における家計調査のデータを用いて、食肉の摂取量と価格を所得水準ごとに推定した。環境への影響に関する指標は世界自然保護基金WWFの報告書に依拠した。所得・食肉価格・消費量の関係について、線形回帰モデルを用いて分析した。ブラジルにおける2008年の食肉摂取量は86g/1000kcalと高いものであり、さらに食肉の摂取量は2008年から2017年にかけて12%増加していたが、これには肉の種類や所得水準によってばらつきがあった。
所得が最も低い層の人々では食肉消費量は増加しておらず、所得が最も高い層の人々と比較すると、牛肉1kgを購入するのに所得比で約17倍の費用を支出していた。購買力と食肉摂取量の間には、異なる所得グループを通して有意な正の関係が見られた。食肉は、2017年のブラジルにおける食生活のカーボンフットプリント* 全体の86%に寄与していた。
ブラジルにおける食肉消費には、購買力の制限、価格面での購入しやすさ、物価上昇、所得格差などが要因として関与している可能性がある。本研究の結果は、食品の入手可能性や摂取量だけでなく、地域特有の要因としての社会経済的な格差や食品が持つ文化的意味との関連性も示している。
* 製品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至る過程を通して排出される温室効果ガスの総量。カーボン(CO2 )の排出量に換算して表示される。
Mariana Hase Ueta, Jennifer Tanaka, Dirce Maria Lobo Marchioni, Eliseu Verly Jr, Aline Martins de Carvalho
2023/01/31
Food sustainability in a context of inequalities: meat consumption changes in Brazil (2008–2017)