論文概要
畜産業が環境に対して及ぼす影響の大きさは畜産製品の消費量に比例している。本研究では、犬、猫、および人間の食生活において畜産動物が相対的にどの程度消費されているかを明らかにするため、2020年の米国内、および2018年の世界における犬・猫・人間の食餌で必要とされるエネルギーを検証した。また、米国のペットフード原材料、および世界で消費されるプラントベース食品と動物性食品の環境持続可能性に関する指標も調査した。食餌において畜産動物を消費する相対比率は、アメリカでは平均で犬 17.7%、猫 2.3%、人間 80.0%であり、世界全体では犬 7.7%、猫 1.2%、人間 91.1%であった。
栄養学的に健全なヴィーガン食へ完全に移行した場合、屠殺を免れる陸上の畜産動物の個体数は、犬・猫・人間の食餌に対して、米国ではそれぞれ17億、2億、78億であり、世界全体では60億、9億、713億であった。また、すべての食餌グループにおいて、水生動物では数十億の個体が屠殺を免れることになる。さらに、土地と水の利用、温室効果ガス排出、酸性化ガスや富栄養化ガスの排出、殺生物剤の使用に関しても、すべての食餌グループにおいて、その影響を非常に大きく削減することができる。
栄養学的に健全なヴィーガン食が世界規模で導入される場合、犬の食餌がヴィーガン食となるにことで解放される土地の面積は、サウジアラビアまたはメキシコよりも大きく、猫の食餌では日本またはドイツより大きく、人間の食餌では世界最大の国であるロシアにインドを合わせた面積を上回ることになる。このような食生活によって節約できる淡水量は、犬の食餌についてはデンマークで再生可能な総淡水量を上回り、猫ではヨルダン、人間ではキューバにおいて再生可能な総淡水量を上回っていた。また、こうした食生活によって削減できる温室効果ガス排出量は、犬の食餌については南アフリカまたは英国、猫ではイスラエルまたはニュージーランド、人間ではインドまたはEU全体から、それぞれ排出される温室効果ガス量を上回ることになる。
ヴィーガン食によって節約できる食糧エネルギーで上乗せして養うことができる人口は、2018年の人口をもとにすると、犬の食餌に相当するエネルギーでは欧州連合の総人口を上回り、猫の食餌ではフランスまたは英国、人間の食餌では地球上のすべての国家・集住地域(世界銀行の定義による)の総人口を、それぞれ上回っていた。これらの試算はいずれも控えめに見積もって得られた推定値である。
Andrew Knight
2023/10/04
The relative benefits for environmental sustainability of vegan diets for dogs, cats and people