論文概要
現代の海洋漁業は危機に瀕しており、同じ漁獲量を確保するためには1950年代の2倍に相当する漁獲努力量*1 を必要とし、多くの船団は経済的あるいは生態学的な持続可能性を超えて操業している。漁獲をめぐるこうした競争において収益は減少し、その結果として起こり得るのは、コスト削減のために弱い立場の労働者を搾取する深刻な労働虐待であり、これには現代における奴隷制度も含まれる。
ここでは、漁業における現代の奴隷制度と労働虐待を反映する指標として、各国ごとの世界奴隷指数 Global Slavery Index*2 を用いる。主要な漁業国においては、奴隷指数の推計値と漁業におけるガバナンスは、国家レベルで相関が見られる。さらに、海上における労働虐待が記録されている国々では、補助金による遠洋漁業のレベルが高いことや、漁獲量の報告が不十分であることなど、重要な特徴が共通して見られる。
漁業部門における現代の奴隷制度に関してはさらなる調査が必要であり、この問題が乱獲や漁業政策とどのように関連しているのか、またこうした労働市場におけるリスクを軽減するためにどのような措置が求められるのかを明らかにする必要がある。
*1 漁獲対象物を漁獲するために投入される資本、労働等の投入量 *2 オーストラリアの国際人権団体Walk Freeが発表している世界的な調査で、現代の160カ国における奴隷制の規模について国別推計値を提供している。
David Tickler, Jessica J Meeuwig, Katharine Bryant, Fiona David, John A H Forrest, Elise Gordon, Jacqueline Joudo Larsen, Beverly Oh, Daniel Pauly, Ussif R Sumaila, Dirk Zeller
2018/11/07
Modern slavery and the race to fish