論文概要
本研究では、畜産動物が感情や感覚を経験する能力を持っていることや動物たちの苦しみをどう考えるかについて、文化や人口統計学的な特徴によってそれがどのように異なるかを調べた。ブラジル・ロシア・インド・中国・米国におけるアンケート調査から、合計5027件の回答を得た。
動物の感覚性に対する認識はブラジル人においてより高く、中国人ではより低かった。ロシアとインドでは、畜産動物の苦しみと感覚性に対する認識のレベルは年齢とともに高くなり、米国と同様のレベルとなっていた。これら全ての国において、動物に感情や感覚を経験する能力があることに同意する人は、同意しない人よりも多かった。肉を食べることが動物の苦しみに関わっていることに同意する割合は、インド人の男性でもっとも高く、ブラジルと中国の女性がそれに続いていた。この割合は、アメリカ人と中国人では他に比べて低かった。
女性では、男性に比べて思いやりのレベルが高い。肉を食べることが動物の苦しみに関係することに同意する割合は、ロシアでは男性においてやや高く、アメリカでは若い男性で高い。この割合はアメリカでは若い男性で高かったのに対し、インドと中国では年齢による影響は逆の方向に働いていた。
貿易における公正な競争のためには、手続きを標準化し、動物性タンパク質に対する需要とともに、倫理に配慮した生産に対する需要を尊重することが重要である。全体として、畜産動物の感覚性と苦しみに対する認識は、国や人口集団によって大きく異なることが明らかになった。こうした違いは、食肉の生産・消費の倫理性に関する認識、また世界の畜産品貿易に大きな影響を及ぼしている可能性がある。
Fernando Mata, Bastian Jaeger, Ivo Domingues
2022/12/04
Perceptions of Farm Animal Sentience and Suffering: Evidence from the BRIC Countries and the United States