論文概要
食肉消費量を削減する政策は、気候変動目標を達成するために必要であるとともに、国民の健康状態も改善できる可能性がある。こうした政策を実現するうえでは、社会がそれを受容できるかどうかが重要となる。本研究では、赤肉と加工肉の消費を減らすための政策を人々が受け入れる可能性を推定し、このような政策が健康や環境に有益であるというフレーミング*を用いた場合に受容可能性が変わるかどうかを検証した。
オンライン実験には英国の成人2215名が参加し、無作為順で提示された6つの政策に関して、その受け入れやすさを7段階で評価した。この政策の評価に先立って、参加者は2つのフレーミング条件のどちらかに無作為に振り分けられ、それぞれの条件において参加者は、提示された政策が健康または環境のいずれかに有益であると説明された。
回帰モデルを用いて、主要なアウトカムである、政策に対する受容性がフレーミングによってどのように変わるかを調べた。最も受け入れられていた政策は商品ラベルであり(48%で支持)、次いでメディアでのキャンペーン(45%)、(病院・公的機関などでの赤肉・加工肉の利用制限(40%)、課税などによるインセンティブの提供(38%)の順であった。最も受け入れられていなかったのは、赤肉・加工肉の価格の引き上げ(27%)と広告の禁止(26%)であった。
参加者のうちかなりの割合が、ほとんどの政策について支持も反対もしていなかったが(26~33%)、このような中立的な態度は、価格の引き上げに関しては16%に減少していた。健康と環境による2つのフレーミングでは、政策に対する受容性への影響に違いは見られなかった(-0.06, 95%CI:0.18,0.07)。
食肉消費削減のための6つの政策のいずれかを支持していたのは、健康か環境かのフレーミングの条件に関わらず、参加者の半数以下であった。逆に、これらの政策に反対していたのも、価格の点を除けば参加者の半数以下であり、このことは、世論に影響を与える余地は相当に大きく、環境と健康に関する目標達成のために食肉消費を削減する政策に対する支持を得られる可能性があることを示唆している。
* メッセージを受け取った相手から感情的反応を誘発したり、意思決定に影響を与えたりするために情報を構成し提示する手法
Rachel Pechey, James P Reynolds, Brian Cook, Theresa M Marteau, Susan A Jebb
2022/05/10
Acceptability of policies to reduce consumption of red and processed meat A population-based survey experiment