論文概要
背景: 英国では、地球の健康を守り、非感染性疾患を減らすために、肉の消費量を減らす必要がある。英国の全国食事栄養調査の分析によると、2008年から2019年にかけて、1人1日当たりの食肉消費量は 103.7gから 86.3gに減少している(年率~1.7%)。食肉消費量の削減目標としては、例えば2030年までに 30%削減するという国家食糧戦略の目標があるが、上記の減少傾向は目標を達成するうえで十分に速いとはいえない。
目的: 本研究の目的は、どのような行動が食肉消費量の削減につながっているかを検証することである。具体的には、食肉消費を減らすための主な行動戦略として、消費頻度の削減およびポーションサイズ* の縮小の2点について調査した。
デザイン: 全国食事栄養調査のローリングプログラム(2008/09-2018/19)のデータに関して、ポアソン回帰モデルおよび線形回帰モデルを用いて、肉を食べる日数、肉を含んだ食事を摂る回数、肉を含んだ食事に使われている肉のポーションサイズ、の3項目における変化を検証した。食肉消費量は、4日間の食事日誌から分解したデータに基づいて算出した。消費量全体の減少幅に対し、2種類の消費行動がそれぞれ寄与している割合を分解分析によって推定した。
結果: 平均では、肉を食べる日数は 3.3日から 3.0日に減少し(P < 0.001)、1日あたりで肉を食べる回数は 1.2回から 1.1回に減少(P = 0.01)、さらに肉のポーションサイズは 85.8gから 76.1gに減少していた(P < 0.001)。肉の消費量の減少に対して最も大きく寄与していたのはポーションサイズであり(57%)、次いで肉を食べる日数(37%)、肉を使った食事の回数(6%)となっていた。
結論: 今回の調査結果は、英国における食肉消費量の減少には、肉のポーションサイズが小さくなっていることが大きく寄与していることを示唆している。肉を食べる行動についてのニュアンス(「肉を食べない日」・「肉を使わない食事」・「肉を減らした食事」)を使い分けることは、行動変容を促すための介入方法を策定するうえで役立つ可能性があり、肉を減らした食事を推進する必要性を示し、人間と環境の健康のために食肉消費の削減を加速させることができる。
* 食品を数えるのに使う単位で、目安量に近い量を指す
A Bellows, L Jaacks, P Alexander, C Stewart
2023/10/24
Contribution of meat-free days, meat-free meals, and portion sizes to UK meat consumption declines