論文概要
背景: 食肉の消費を減らすことは人類と地球の健康にとって有益である。これまでのモデリング研究では、食肉を対象とした財政措置によって健康と環境の面で大きな利益が得られることが実証されているが、これに加えて他の介入措置を追加すれば財政措置の効果が高まる可能性がある。本研究では、3次元バーチャル・スーパーマーケットにおいて、食肉価格の値上げと情報ナッジ、およびこれら2つの措置の組み合わせが食肉の購入量に及ぼす効果について検証した。
方法: 無作為化比較試験において、以下の4つの異なる条件を並行して設定した。すなわち、対照条件、食肉価格の30%値上げ(価格条件)、食肉の生産が環境に与える影響と、そこに消費者が関わっていることについての情報ナッジ(情報ナッジ条件)、これら2つの組み合わせ(組み合わせ条件)のいずれかの実験条件に参加者(18歳以上)を無作為に割り付けた。参加者には、家庭生活に必要な1週間分の買い物をすることを求めた。1世帯当たりで1週間に購入する肉の総量(グラム換算)を主要アウトカムとした。
結果: 2020年6月22日から8月28日に参加者を募集し、対照条件および3種類の実験条件へ無作為に割り付けた。最終的なサンプル数は533名であった。組み合わせ条件の参加者が購入した食肉は減少し、その減少幅は対照条件と比較して386 g(95%信頼区間:-579、-193)であった。また、対照条件と比較して、価格条件においても食肉の購入は 144 g (95%CI:-331, 43)減少していたが、この減少幅は統計的には有意ではなかった。一方、情報ナッジ条件では、購入した食肉の総量は対照条件と同程度(~1g)であった(95%CI:-188, 189)。
結論: 食肉の購入量を最も大きく削減するためには、政策において価格設定と情報ナッジを組み合わせることが必要である。仮想のスーパーマーケットにおける食肉の購入量が減少したのは、食肉の価格を30%引き上げ、情報ナッジを併用した場合であった。本研究の結果は、エビデンスに基づいて食肉の購入を減らすための政策手段を設計するうえで有用である。
R. E. Vellinga, M. Eykelenboom, M. R. Olthof, I. H. M. Steenhuis, R. de Jonge, E. H. M. Temme
2022/06/07
Less meat in the shopping basket. The effect on meat purchases of higher prices, an information nudge and the combination: a randomised controlled trial