論文概要
農業は、ヒトの感染症を引き起こす可能性がある要因の一つと考えられてきた。しかし、感染症と農業の関わりに一般性があるのかについては、これまでに体系的な検証がなく、そのため土地の利用や開発に関する政策において公衆衛生の問題は十分に考慮されてこなかった。
本研究では、この問題に関連する先行研究34件についてメタアナリシスを行い、東南アジアの農地で居住または労働に関わる人々が病原体に感染する確率は、こうした環境にない人々に比べて平均1.74倍(信頼区間:1.47-2.07)であることがわかった。
このような影響は、アブラヤシ農場とゴム農場、養鶏場を除く畜産農場への曝露で最も大きく、病原体としては鉤虫症(OR 2.42、CI 1.56-3.75)、マラリア(OR 2.00、CI 1.46-2.73)、ツツガムシ病(OR 2.37、CI 1.41-3.96)、リケッチア症の紅斑熱群(OR 3.91、CI 2.61-5.85)で大きい。一方、糞口経路を介する感染症については、感染のリスクに変化は認められなかった。
公衆衛生対策による効果は土地利用や疾病の種類によって異なるが、これらの結果からは、東南アジアでは農地利用によって多くの感染症に関する状況が悪化していると考えられる。
Hiral A Shah, Paul Huxley, Jocelyn Elmes, Kris A Murray
2019/09/20
Agricultural land-uses consistently exacerbate infectious disease risks in Southeast Asia