論文概要
アルツハイマー病に対する懸念は高齢化が進む世界各国で高まりつつある。現状ではアルツハイマー病に対して有効な治療法は確立されていないため、発症を予防することが重要であり、これに関する研究が進められている。アルツハイマー病および認知症関連疾患を予防するためにはライフスタイルをどのように変えれば最も効果があるのかを明らかにするため、様々なライフスタイルや食事パターンに関する研究が行われてきた。
こうした中で最も詳しく研究されている食事パターンは、地中海食、DASH食、MIND食、ケトジェニック食、地中海・ケトジェニック修正食である。しかし、これらの食事パターンの効果に関して、これまでに報告されている研究結果には相違が見られる。このナラティブ・レビューでは、これらの食事パターンと認知症関連疾患の症状の関連について、先行研究で報告されている臨床的エビデンスを検証・総括し、さまざまな臨床的環境において認知症関連疾患の病態を予防・改善する効果について考察する。
全体として、プラントベースの食事パターンは、認知症関連疾患の予防および発症リスクの低減と概ね一貫して正の相関があることが明らかにされている。こうした効果は、プラントベース食に含まれる特定の食事成分が脳に及ぼす直接的な影響によるだけでなく、糖尿病・肥満・心血管疾患など、認知症関連疾患の危険因子による負の影響を低減させることによる間接的な影響からも生じている。
また、その他の心理社会的要因が食事の摂取に及ぼす影響も重要であり、例えば、社会的なつながりは食事やライフスタイルに直接影響するため、それによって認知症関連疾患のリスクにも影響する可能性がある。このため、今後の認知症関連疾患に関する前向き研究では、心理社会的要因を考慮にいれた包括的なアプローチが必要である。
Ines Ellouze, Julia Sheffler, Ravinder Nagpal, Bahram Arjmandi
2023/07/19
Dietary Patterns and Alzheimer's Disease: An Updated Review Linking Nutrition to Neuroscience