論文概要
消費者が購入する食品は、一般に食料品貿易によってより調達しやすくなり、多様性も高くなると考えられているが、このことが人々の健康に対してどのような影響を及ぼしているかについての実証的な知見は乏しい。
ここでは、世界全体で見た場合、食事に関連する健康リスクと死亡数のうち相当の割合が国際間の食料品貿易に起因するものであること、さらに、食料品貿易による影響が望ましいものかどうかは対象となる食品の種類によって異なることを示す。
2019年の二国間貿易に関するデータ、および食品ごとの疾患リスクに関するデータを用いた推定では、果物・野菜・豆類・ナッツ類の輸入によって、食事に関連するリスクが輸入国において低下し、非伝染性疾患による死亡数は世界全体でおよそ140万人の減少と関連することがわかった。
これに対し、赤身肉の輸入によって、食事に関連するリスクは輸入国で上昇し、死亡数としてはおよそ15万人の増加に関連していた。
食料貿易が及ぼす影響はこのように大きなものであり、貿易と農業政策において公衆衛生を守り、またフードチェーンの混乱に対して政策的に対応するうえでは、食生活に関連するリスクを考慮することが重要となる。
M Springmann, H Kennard, C Dalin, F Freund
2023/10/09
International food trade contributes to dietary risks and mortality at global, regional and national levels