論文概要
背景: 現在、世界の食料システムによって人類の健康と環境の持続可能性が脅かされている。2019年、EAT-Lancet委員会は、持続可能な食料システムで生産された健康的な食事の推進を目的とした世界的な基準食を初めて定めた。しかし、このEAT-Lancet基準食* を食生活の指標として定量化する方法についてはコンセンサスが得られておらず、死亡率との関係については広く検証されていない。
目的: EAT-Lancet食を遵守する程度を定量化するための新たな指標を開発し、スウェーデンの大規模な人口集団を対象としたコホートにおいて死亡率との関連を調べた。また、この指標に含まれる食品成分、およびそれらと死亡率との関連についても検討した。
方法: 食事とがんに関するマルメー研究プロジェクトMalmö Diet and Cancer studyのコホート(22,421人、ベースライン時点における年齢=45~73歳)を用いた。食事データは食事歴法をベースにした調査によって収集した。EAT-Lancet食事療法で定められた食品成分14項目について、その摂取量、および(摂取量の)基準範囲に基づいて評価し(各成分について0~3点)、その全体からEAT-Lancet基準食への遵守度を算出した(合計で0~42点)。死亡率との関連は、平均20年間の追跡期間におけるデータに基づいて検証し、潜在的な交絡因子に関して調整を行った。
結果: EAT-Lancet基準食を遵守する程度によって参加者を5つのグループに分類したところ、遵守度の最も高いグループ(23点以上)では、最も低いグループ(13点以下)に比べて全死亡率(HR = 0.75、95%CI = 0.67-0.85)の低下との関連が見られ、がん死亡率(HR = 0.76、95%CI = 0.63-0.92)、心血管死亡率(HR = 0.68、95%CI = 0.54-0.84)の低下とも関連していた。ここで観察された死亡率の低下には、遵守度の指標に含まれるいくつかの食品成分が寄与していた。
結論: 本研究では、食生活に関する新しい指標を開発してEAT-Lancet食の遵守度を検証し、この指標に基づく分類において遵守度が最も高い人では、死亡リスクが25%低下することが明らかになった。この結果は、持続可能な食事のためのガイドラインの開発に向けて新たなエビデンスを加えるものである。
* プラネタリーヘルスダイエットとも呼ばれ、果物や野菜など加工度の低い植物性食品の摂取を重視し、魚や肉、乳製品の摂取は控えめにする食事法。
Anna Stubbendorff, Emily Sonestedt, Stina Ramne, Isabel Drake, Elinor Hallström, Ulrika Ericson
2022/03/04
Development of an EAT-Lancet index and its relation to mortality in a Swedish population