論文概要
※本記事は The New York Declaration on Animal Consciousness のウェブサイト内の3つのページ「Declaration」、「Background」「Sign the Declaration」の翻訳です。ニューヨーク大学のSofia Fogel氏から、翻訳公開の許可をもらっています。ただし公式の翻訳ではなく、同宣言の団体・著者に内容を支持されているわけではないことも明記しておきます。
目次
動物意識に関するニューヨーク宣言(原文)
どの動物が意識的経験をもつ能力を有するのか。不確かなことも多く残っているが、広く合意の取れた論点が既に現れている。
第一に、他の哺乳類や鳥類に意識経験を帰属することを支持する強い科学的な証拠が存在する。
第二に、経験的証拠は少なくともすべての脊椎動物(爬虫類、両生類、魚を含む)と多くの無脊椎動物(最低でも頭足軟体動物、十脚甲殻類、昆虫類を含む)が意識的経験をもつ現実的な可能性を示唆している。
第三に、ある動物が意識的経験をもつ現実的な可能性が存在するならば、様々な決定を下す上でその動物に影響する可能性を無視するのは無責任である。我々は福祉上のリスクを考慮すべきであり、上記の科学的な証拠を活用してそれに対応すべきである。
本宣言の著者および署名者個々人は、個人的な立場で署名したものであり、いかなる機関や組織の見解も代表していない。
クリスティン・アンドリュース
哲学教授、ヨーク動物心研究講座
ヨーク大学
ジョナサン・バーチ
哲学教授
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカルサイエンス
ジェフ・セボ
環境学・准教授、心・倫理・政策プログラム・ディレクター
ニューヨーク大学
コリン・アレン
哲学特別教授
カリフォルニア大学サンタバーバラ校
コンスタンチン・アノヒン
先端脳研究所 教授
ロモノソフ・モスクワ国立大学
キュラム・ブラウン
自然科学部 教授
マッコーリー大学
ゴードン・M・バーガート
同窓会特別功労教授(心理学、生態学・進化生物学
テネシー大学ノックスビル校
デイビッド・チャルマーズ
哲学・神経科学大学教授
ニューヨーク大学
ラース・チッタカ
感覚・行動生態学 教授
ロンドン大学 クイーン・メアリー校 教授
ニコラ・S・クレイトン FRS
比較認知学教授
ケンブリッジ大学
ロビン・クルック
生物学准教授
サンフランシスコ州立大学
デビッド・エデルマン
客員研究員
ダートマス大学
ロバート・エルウッド
動物行動学名誉教授
クイーンズ大学ベルファスト校
ベッカ・フランクス
環境学助教授
ニューヨーク大学
マチルダ・ギボンズ
ペレルマン医科大学 博士研究員
ペンシルバニア大学
マーティン・ジュルファ
神経科学特級教授
ソルボンヌ大学
ピーター・ゴドフリー=スミス
科学史・科学哲学部門 教授
シドニー大学
シモーナ・ギンズバーグ
神経生物学准教授(退官)
イスラエル放送大学
ステヴァン・ハルナド
カナダ認知科学研究講座教授
マギル大学
エヴァ・ヤブロンカ
名誉教授、科学史・科学哲学
テルアビブ大学
クリストフ・コッホ
会長兼主任研究員
アレン脳科学研究所
ジョン・マラット
WWAMI医学教育プログラム臨床教授
ワシントン大学アイダホ校
ジェニファー・メイザー
心理学教授
レスブリッジ大学
ノーム・ミラー
心理学・生物学 准教授
ウィルフリッド・ローリエ大学
リアド・マドリック
心理科学部 教授
テルアビブ大学
ルシア・メローニ
神経学研究教授
ニューヨーク大学医学部
ダイアナ・ライス
心理学教授、動物行動学・保護学修士プログラムディレクター
ハンター・カレッジ
アイリーン・M・ペッパーバーグ
心理・脳科学部門研究教授
ボストン大学
アレクサンドラ・シュネル
研究員
ケンブリッジ大学
アニル・セス
認知・計算神経科学 教授
サセックス大学
MV(スリニ)・スリニヴァサン FRS
クイーンズランド脳研究所 名誉教授
クイーンズランド大学
ナラヤナン・スリニヴァサン
認知科学科 教授
インド工科大学カーンプル校
クルブシャンシン・スリャワンシ
科学者
自然保護財団(マイスル
ブルーノ・ヴァン・スウィンデレン
クイーンズランド脳研究所 教授
クイーンズランド大学教授
土谷 尚嗣
モナシュ大学 心理科学部 教授
モナシュ大学
クレオ・ヴェルクイル
科学者
ストックホルム環境研究所
アンナ・ウィルキンソン
生命科学部 上級講師
リンカーン大学
カトリーナ・ワイマン
ウィルフ・ファミリー物権法教授、環境・エネルギー法LLMプログラム・ディレクター
ニューヨーク大学ロースクール
ヨッシ・ヨヴェル
テルアビブ大学サゴル・スクール・オブ・ニューロサイエンス動物学准教授
テルアビブ大学
動物意識に関するニューヨーク宣言に署名する(原文)
関連する専門知識をお持ちの方で、本宣言への署名を希望される方は、所属機関のEメールアドレスから、nydeclaration@gmail.comへメールを送信してください。メールには、宣言書に署名したい旨と、あなたの役職、所属機関を明記してください。これらのメールは定期的に確認され、署名が追加されます。
ご質問、ご意見、ご要望がございましたら、nydeclaration@gmail.com までメールでお問い合わせください。
ニューヨーク宣言の背景(原文)
近年の急速な進歩
動物の認知科学、行動科学にとってここ10年間はエキサイティングな時間だった。衝撃的な研究成果が新たに現れて、多くの無脊椎動物を含む広範囲に渡るヒト以外の動物たちが驚くほど豊かな内面生活をもつことが示唆され続け、動物意識に関する議論の刷新を促している。ほんの10個だけ重要な例を挙げよう。
カラスは訓練すると自分の見ているものを報告することができるようになる。サイエンス誌に掲載された2020年の研究で、アンドレアス・ニーダーとその同僚たちはカラスを訓練した結果、カラスは自分の視覚的知覚を頭のジェスチャーを使って報告することができるようになった。カラスたちには、明るい刺激、暗い刺激、無刺激のいずれかが示された。特に、刺激が極めて暗い場合にはときおり間違うこともあったが、ある刺激を示されたかどうかをカラスたちはおおよそ正確に報告した。実験の間、研究者たちは、鳥類において高次元の認知と結び付けられていると考えられている脳領域(NCL)の活動を計測した。その結果NCLの活動が追跡しているのは、ある刺激が提示されている(presented)かどうかではなく、鳥類が刺激を見ているかどうかであることが発見された。言い換えれば、この結果が示しているのは、NCLにおける脳活動はカラスの視覚経験の神経相関項であることである。
蛸は条件付け場所嗜好性試験において痛みを避け鎮痛剤に価値を認める。「条件付け場所嗜好性(conditional place preference)」試験は実験用ラットの痛みを評価するために開発された。2021年、頭足類の専門家であるロビン・クルックは蛸にこの試験を実施した。クルックはまず、蛸に水槽内の2つの部屋を選ばせた。次に、蛸の一部は選好する部屋にいるときに酢酸を注射され、その効果を経験することになった。酢酸を注射されたタコは、その部屋に対する持続的な嫌悪を示した(生理食塩水を注射された対照用の蛸はそうならなかった)。次に、酢酸を注射されたタコは、当初は好まなかった部屋で局所麻酔薬(リドカイン)の効果を経験した。これらのタコは、リドカインの効果を経験した部屋に対する嗜好性を持続的に持つようになった(対照群ではそうならなかった)。ラットや人間であれば、このパターンから、酸の注射が痛みを引き起こし、リドカインがそれを和らげたと推測されるだろう。
イカは自分がそれをどう経験したのかも含めて過去の特定の出来事の詳細を記憶している。多くの動物は、何が起きたか、どこで起きたか、いつ起きたかなども含めて、過去の出来事を思い出すことができる。2020年の研究ではさらに進んで、イカはある物事をどのように経験したか、例えば見たか嗅いだかを記憶することができることを示した。この能力は「情報源記憶(source memory)」として知られる。研究者たちは、イカに、カニ、魚、エビの姿を見せたり匂いを嗅がせたりした。そして、3時間後にそれぞれの獲物を見たか、匂いを嗅いだかを示すようにイカを訓練した。訓練後、イカはムール貝やカタツムリのような新しい獲物でも同じ課題をこなすことができた。
ホンソメワケベラはミラーマークテスト(mirror-mark test、「マークテスト」とも呼ばれる)に合格するようだ。動物が自己意識をもつかどうかは長い間、「ミラーマークテスト」を使って探求されてきた。このテストでは、鏡に映る、自分の体に付けられたマークを見た動物がそのマークを消そうとするかどうかが試される。2019年から2023年にかけて行われた驚くべき一連の研究で、研究者たちはホンソメワケベラという魚がこのテストの4つの段階をパスできることを示した。まず、鏡にさらされると、魚はあたかも競争相手となる魚が見えるかのように攻撃的に反応する。第二に、攻撃性が薄れ、鏡の前で逆さまに泳ぐなど通常はとらない行動をとり始める。第三に、魚は鏡の中の自分を調べるように見える行動をとる。最後に、実験者が魚に色のついたマークをつけると、鏡に映ったそのマークを見た魚は、利用可能な表面に擦り付けてマークを消そうとする。
ガーターヘビは匂いを利用したミラーマークテストに合格する。動物が鏡に移る自己を認識できるかどうかによって自己意識をもつかどうかを判定することは、すべての種に適切でであるわけではないかもしれない。ヘビのように、主に匂いや視覚以外の手がかりを頼りに環境内を移動する動物もいる。2024年の研究では、(1)自分の匂い、(2)自分の匂いに別の匂いの「マーク」をつけたもの、(3)「マーク」となる匂いだけ、(4)未知のヘビの匂い、そして(5)未知のヘビの匂いに「マーク」をつけたもの。様々な香りを染み込ませたコットンパッドに対する反応を測定することで、ヘビの自己認知をテストした。 ガーターヘビは、他のどの匂いよりも長くマークの付いた自分の匂いを探査した。このことは、ヘビが自分の匂いを認識し、自分のにおいが変わればそれに気づくことを示唆している。
ゼブラフィッシュは好奇心の兆候を示す。猛禽類、カメ、ミツバチなどの多くの動物種は、新しい情報を求める欲求をもつ兆候を示す。2023年、研究者たちはゼブラフィッシュにこうした兆候があるかどうかをテストした。その結果、ゼブラフィッシュは新しい物体に持続的な興味を示すが、観察する新しい物体の数が増えるにつれて、その興味はより急速に薄れていくことがわかった。ゼブラフィッシュは自発的に、しかも追加の報酬がないにもかかわらず新しい物体を探索することから、新しい情報を学ぶことに内在的な報酬を見出しているようだ。
ミツバチは明らかに遊び行動を示す。動物の意識に関する既存の研究の多くは痛みに焦点を当てているが、ますます多くの研究者たちがポジティブな経験の兆候を見つけ出そうとしている。2022年の研究で、研究者たちはマルハナバチが遊びの5つの特徴と一致する仕方で、木のボールを転がすことを発見した。第一に、ハチがボールを転がすのは、目的のための手段としてではなく、内在的に報酬が得られると感じたからである。第二に、その行動は明白な機能を果たしていない。第三に、ミツバチは採餌や交尾のような別の目的のために利用する行動の予行を行っているわけではない。第四に、ハチはボールを繰り返し転がすが、毎回まったく同じように転がすわけではない。最後に、この行動はハチがリラックスしているときに増加することから、ストレスによるものではなく、楽しい経験であることが示唆される。
ザリガニは抗不安薬によって変化する「不安様(anxiety-like)」状態を示す。2014年から2017年にかけて行われた一連の研究(1, 2, 3)では、ザリガニがどのようにストレスに反応するかを調査し、ザリガニが不安の有用なモデルになる可能性を探った。研究者たちは、明るい通路と暗い通路の両方がある迷路にザリガニを置いた。ザリガニは新しい環境を探索する自然な傾向をもつが、明るい場所よりも暗い場所を好む。研究者が電気ショックを与えてザリガニのストレスを高めると、ザリガニは迷路の明るい場所をさらに激しく嫌うようになった。ベンゾジアゼピンは人間では不安を和らげるために使われるが、この薬を投与されたザリガニは、再び迷路の明るい場所を探索するようになった。
カニは競合する動機のバランスを取りながら柔軟な判断を下す。ロバート・エルウッドらの長期研究プログラムでは、ヤドカリやイソガニがリスク状況下でどのような選択をするかが調査されている。2024年の研究では、イソガニが明るい光への嫌悪感と電気ショックへの嫌悪感をどのように天秤にかけるかを探った。これらのカニは通常、明るい光から逃れるために避難所に入るものの、過去にその避難所で受けたショックの強度や光の明るさによっては、明るい光を選ぶことがある。ラット、イグアナ、ミツバチなど他の動物も、記憶を頼りに優先事項間での繊細なトレードオフを行う。この種のトレードオフは、動物が異なる種類のニーズを重みづけする際に用いる「共通通貨」の存在を示唆しているが、人間においてその役割を果たすのは快楽や痛みである。
ショウジョウバエには活動的な睡眠と静かな睡眠が存在する。長年にわたりショウジョウバエが睡眠をとることは知られていたが、最近の研究により、「静かな」睡眠と「活動的な」睡眠という2種類の睡眠を誘発する方法が発見された。静かな睡眠は脳活動が大幅に減少するのに対し、活動的な睡眠では外面的な行動が見られない状態でも脳活動が持続する。人間では徐波睡眠とREM睡眠が異なる機能を果たすのと同様に、研究者たちはショウジョウバエにおける静かな睡眠と活動的な睡眠も異なる機能を持つと推測している。静かな睡眠は代謝を遅くし、ストレスを調節する役割を担い、活動的な睡眠は認知機能を支援すると考えられる。また、2021年に『ネイチャー』誌に掲載された研究では、ショウジョウバエの睡眠が社会的孤立により乱されることが示された。ショウジョウバエは他の個体と一緒にいる時に最も安らかに眠るのだ。
動物意識に関する新たな展望
意識とは何か?「意識」という語は様々な意味をもつ。「動物の意識に関するニューヨーク宣言」で焦点を当てたのは、あるひとつの重要な意味であり、ときおり「現象的意識」または「有感性(sentience)」と呼ばれるものである。この意味において問題となるのは、どの動物が主観的な体験を持ちうるかである。これには感覚体験(特定の触感、味覚、視覚、嗅覚の体験や、快楽、痛み、希望、恐怖など)やよい感じ、悪い感じの体験(喜びや痛み、希望、怖れの体験など)が含まれる。「意識」という語のこの意味はトマス・ネーゲルが「コウモリであるとはどのようなことか?」と問うた際に念頭に置いていたものである。
主観的体験には単に刺激を検知する以上の能力が必要だが、人間似た言語や理性などの洗練された能力は必要ではない。現象的意識は生の感じ ── 感覚的であれ情動的であれ直接的に感じられる体験 ── であり、これは人間と多くの他の動物間でかなりの程度、共通する可能性のある部分である。もちろん、人間の言語的、合理的能力は一部の人間に、他の動物にはない形式の体験(例えば、言語的「内なる独白」)をもつことを可能にするかもしれない。同様に、多くの他の動物が人間にはない形式の体験を持つ可能性もある。
この意味で意識を持つとされる動物はどれか?上で説明された研究の進展を総合すると、明確なメッセージが浮かび上がる。すなわち、脊椎動物全体および多くの無脊椎動物を含む極めて広範囲にわたる動物が主観的体験を有する可能性を我々は真剣に受け取る必要がある。
動物の意識を探求する際に「証明」、「確実性」、「決定的な証拠」という言葉を使用するのは適切ではない。意識の本性は依然として激しく議論されているためだ。しかし、同じ行動が人間や他の動物に見つかる場合には意識的な処理過程によってうまく説明される場合には、学習、記憶、計画、問題解決、自己意識、その他の能力の顕著な事例を意識の証拠として解釈することは完全に適切だ。このような行動は、動物が意識を持つ可能性を高めるが、それを証明するものではない。それはちょうど、病気の症状がその病気の存在を証明するものではないが、その病気に罹っている可能性を高めるのと同様である。
他の哺乳類や鳥類に関しては、意識の帰属を科学的に強く支持する証拠が確立されていると言える。 ── 決定的な証拠ではないが、多方面からの証拠がすべて同じ方向を指し示している。他の脊椎動物(爬虫類、両生類、魚類)及び多くの無脊椎動物(タコやイカなどの頭足類の軟体動物、ヤドカリやザリガニなどの十脚類の甲殻類、ミツバチやショウジョウバエなどの昆虫類)についても、少なくとも意識が存在する現実的な可能性(realistic possibility)が証拠により確立されていると我々は今や言うことができる。こうした動物たちの意識に関する疑問に答えを出すことを目的として、こうした動物たちの意識に関するさらなる研究を正当化するほどには、その確率は高い。また、そうした動物たちのウェルフェアを真剣に考慮することを正当化するのに十分なほど高い。
ニューヨーク宣言について
動物意識に関するニューヨーク宣言は、過去10年間の研究成果を集約し、メッセージとして発信することを目的としています。この宣言の最初の署名者には、人間の意識(Christof Koch, Anil Seth, David Chalmers, Liad Mudrik, Lucia Melloni, Nao Tsuchiya)、コウモリ(Yossi Yovel)、鳥類(Nicola Clayton, Irene Pepperberg)、爬虫類(Gordon Burghardt, Anna Wilkinson)、魚類(Culum Brown, Becca Franks, Noam Miller)、タコ(Jennifer Mather, Robyn Crook, Peter Godfrey-Smith, David Edelman)、イカ(Alex Schnell)、ヤドカリ(Robert Elwood)、ハチ(Lars Chittka, MV Srinivasan, Andrew Barron, Martin Giurfa)、ショウジョウバエ(Bruno van Swinderen)に関する研究で世界をリードする専門家が含まれます。
私たちは、関連する専門知識を持つ全ての人々に、この宣言に署名し、最初に著名した著名人たちに加わるよう呼びかけています。
この宣言が達成しようとしていることは何でしょうか?目標のひとつは、動物意識の科学が登場しつつある興奮を伝え、このテーマに関するさらなる研究が進むことを促すことにあります。今は決定的な時期です。動物意識を厳密かつ体系的に研究しようとする研究者が増えており、意識の本性についても、どの動物が意識を持つかについても、不確実性は残っていますが、質の高い研究によってこれらの疑問に対する不確実性は既に減少してきています。科学者、大学、政府には、この分野が急速に進歩しており、(より良い意識理論への進展を含めて)さらなる進歩の可能性を秘めていること、そして支援に値することを認識してほしいと考えています。
第二の目的は、アニマルウェルフェアに関する反省を促すことです。この宣言は具体的な政策提言を行うものではなく、署名者たちは道徳的、法的、政治的問題に対して幅広い見解を持っています。しかし合意点もあり、それは、〔ある動物が〕意識をもつことが確実であることが、〔その動物の〕ウェルフェアのリスクを考慮するための前提条件であるべきではないということです。ある動物が意識的である ── 例えば、タコが苦痛を感じる ── 現実的な可能性(realistic possibility)がある場合、そのような可能性は政策的文脈で ── 例えばタコの養殖を支援するかどうかを決定する際に ── 重要な考慮事項とされるべきです。政策立案者は、すべての脊椎動物と多くの無脊椎動物のウェルフェア上のリスクを軽減するために合理的な措置を講じるべきです。
注1:4月19日開催のイベント「動物意識科学の新興(The Emerging Science of Animal Consciousness)」の後、出席者は会議で提示された証拠とその他の関連証拠をまとめた詳細な科学的付録を作成する予定です。これは宣言のウェブサイトに随時掲載される予定です。
注2: この背景文書は、Kristin Andrews, Jonathan Birch, Jeff Sebo, Toni Simsによって作成されました。以下の通り引用してください:
Andrews, K., Birch, J., Sebo, J., and Sims, T. (2024) Background to the New York Declaration on Animal Consciousness. nydeclaration.com.
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