気温35℃でも水を飲めない…国内屠畜場に早急な対応を求める

2024年、2025年の夏は異常に暑かった、そしてこれからも暑くなることが予測されています。
想像してみてください。
そんな中、12時間以上、水分を絶たれたら・・・。とても過酷で、死の可能性もあることがわかると思います。

この過酷で残酷な状況に豚や牛、ヤギを置くということを、国内の多くの屠殺場が継続しています。

2023年のアニマルライツセンターの調査では、日本の牛の屠畜場の37.82%、豚の屠畜場の71.64%の係留所に常時飲水可能な設備が設置されていませんでした。多くの屠畜場が、”動物の体を洗うために流すシャワーで代用している”としています。シャワーの水は輸送されてきてからの僅かな時間流されますが、水はとまります。水は流れ落ち、傾斜のあるコンクリートから消えます。さらには動物たちは自分たちの糞尿で体が真っ黒な状態で、その糞尿が混ざった水を飲むことになります。屠畜場までは早ければ2時間程度、長ければ1日かけてやってくることだってあります。輸送中は水は飲めません。さらに屠殺まで係留所で待つ時間は牛は94.7%、豚は89.1%は8時間以上で、牛は46%が、豚は45.8%が20時間以上なのです。動物の生理生態に反し、水を絶つことは動物虐待であり、更に衰弱することがあれば動物虐待罪で告発される恐れもあります。

アニマルライツセンターから、飲水設備がないと思われる82の屠畜場設置者に対し、要望書を提出しました。この中には、自治体の屠畜場が26含まれ、自治体がほとんどの費用を出資して作られた公社や協同組合も多数含まれています。たとえ民間施設であっても、屠畜場はと畜場法に基づく運営をしており、公務員が中で検査が行われるなど公的な側面が大きいのです。そのような施設が動物虐待の可能性のある行為を継続することに、市民はより大きな声をあげていくべきです。私たちはこれまでアンケート調査という形で個別の事業者名を出さない形での調査をしてきましたが、遅々として進まない現状を鑑み、今回の要望書は回答の有無を含め、内容を公開することを前提に提出(郵送)しました。10月末の回答期限としており、そのころにまた、結果を公表したいと思います。

水すら飲めず、殺されるのを待つ動物たちのために、ぜひ皆さまからも声も届けてください。

貴屠畜場における係留所での常時飲水設備設置の要望書

※個別に変更点がありこの通りではありません

拝啓

秋麗の候、貴殿におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
私たちは、畜産動物のアニマルウェルフェア向上を目指し、市民、企業、政治への提言を続ける市民団体です。

さて、私たちは、屠畜場の係留所に、屠殺される動物のための常設飲水設備がいまだ設置されていないケースが多数残っていることに問題意識を持っています。
飲水を絶つ行為は、動物の快適性などの問題以前に、動物の健康に影響を及ぼし、さらには動物虐待に当たる可能性のある行為です。
貴屠畜場における係留所での常時飲水設備設置の状況について、下記の通り、質問および要望をさせていただきます。

ご検討の上、2025年10月31日までにご回答をくださいますようお願い申し上げます。

すべての屠畜場の係留所が、常時飲水設備を設置しなくてはならない理由は、以下のとおりです。

1:世界動物保健機関(WOAH 国際獣疫事務局)の規定に違反するため

WOAH(世界動物保健機関)の動物福祉規約 第7.5.3条 係留所の設計及び建築には、「飲水は、動物がいつでも摂取でき、その提供方法は、係留される動物に適切なものにすること。飼槽は、糞による汚染のリスクを最小限に抑え、動物に打撲や怪我のリスクがなく、動物の動きを妨げないようデザイン、設置されること。」と規定されています。これは、シャワーなどの水を舐め取るのではなく、常時飲むことができる専用の飲水設備が必要であることを示しています。

2:厚生労働省のガイドラインの遵守のため

平成6年6月 23 日付け衛乳第 97 号「と畜場の施設及び設備に関するガイドラインについて」により、けい留所に備えることが望ましい設備として示しています。移行期間があるにせよ、このガイドラインは1994年、つまり31年前に示されたものであり、現在設置がないことは遵守の意思がないものとみなされても致し方ない状況にあります。国はすでに姿勢を示しており、未対応によるリスクはすべて各と畜場にあります。

3:国内での設置の流れ

日本の牛の屠畜場の37.82%、豚の屠畜場の71.64%の係留所には、牛や豚のための飲水設備が設置されていないことが、2023年5~7月にかけて行った私たちの調査で明らかになっています。しかし、近年は、スターゼン、日本ハム、伊藤ハム米久ホールディングス、プリマハムなど大手食肉企業が自社屠畜場に常時飲水設備を導入しました。個別の要望を行ってすぐにこれらの企業は設置を実行しており、また費用を確認したところ現実的な費用でした。つまり、常時飲水設備の設置は、早急に行うべきものであり、かつそれが可能であるということです。

4:飲水が無いことによる動物の健康被害

水を絶たれることにより、高ナトリウム血症や塩中毒、失明、めまい、頭突き、壁への押し付け、運動失調、痙攣、大脳皮質の層状壊死(laminar cortical necrosis)、脳浮腫、脳と髄膜の好酸球周囲血管浸潤、食欲不振・脱水・電解質異常、代謝ストレス、腎負荷、循環不全を引き起こす可能性があり、死に至る可能性もあります。

さらに、気象庁によると、日本の平均気温は100年で+1.4℃上昇しており、特に2024年、そして今年は災害ではないかと思われるほどの高温が長期間続きました。さらに4.5℃の気温上昇が予測される中、畜産自体が危険にさらされ、農場での対応も急務となっています。熱中症のリスクは年々高まります。屠殺まではなんとか生き残っているから良いという考え方は、動物の命を業にする皆さまのなかに合って良い考え方ではありません。動物を利用することには倫理的責任が伴っています。

屠畜場までようやくたどり着いた動物が、水すら無い状態に置かれていることは一般常識では考えられない状況です。

5:動物愛護及び管理に関する法律 第44条2項の罰則にあたる可能性

上記の通り、生理生態に必要な飲水を絶つことは、動物愛護及び管理に関する法律第44条2項の「みだりに、給餌若しくは給水をやめ衰弱させる行為、または健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し衰弱させる行為」に該当し、動物虐待罪の罰則に当たる可能性があります。WOAHの世界基準で常時飲水が規定されており、国内でも多数の屠畜場が常時飲水設備を設置済みであることを考えると、みだりな虐待行為に当たる可能性があります。また、飲水を絶たれた動物が衰弱する個体がでることは容易に予測がつき、故意でなかったとしても未必の故意に当たります。常時飲水設備を行わず、違法状態にあることは、法令遵守(コンプライアンス)が脆弱な状態であるということです。これは貴屠畜場および取引先への重大なリスクです。


屠畜場におけるアニマルウェルフェア対応の遅れ、または動物虐待的状態の存在は、畜産物を調達する企業にとってのリスクになり得ます。アニマルウェルフェアは食品関連企業にとって”向上させなくてはならない”課題になりつつあります。OECD多国籍企業行動指針には、アニマルウェルフェアが明記されました。上場企業は非財務情報としてアニマルウェルフェアの取り組み状況を公表する必要に迫られています(SASB)。世界がアニマルウェルフェアを急速に向上させる中、日本の畜産物だけが立ち止まっていて良いわけがありません。

貴屠畜場では、豚・牛のための常時飲水可能な設備はございますか。なお、シャワーの水では適切な量の水を接種することができないばかりか、衛生的な水を飲むことは不可能です。

万が一、まだ設置されていない場合、いつまでに設置予定でしょうか。

また、できるだけ早急に常時飲水可能な状態にしていただきたく、迅速な対応を強く要望いたします。

ご回答をお待ちしております。

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