WAP(世界動物保護協会)による世界50か国の動物保護評価(2014年)を参考に、中国に存在する畜産動物の福祉に関する法令やガイドラインの一部(動物の扱いに関わる部分)を翻訳しました。国家レベルの畜産法では、家畜に適切な飼育環境を与えること、輸送は家畜の安全を守り、必要な空間、食べ物、水を与えなければならないことが定められています。また世界最大の養豚国のためだと思いますが、豚については別途国家レベルの豚屠殺管理条例・豚屠殺実施方法管理条例が制定されています。豚屠殺管理条例では屠殺の条件及び作業手順と技術に言及し、豚に水を注入すること(屠殺の前に体重を増加させる処置)を禁止しています。また豚屠殺実施方法管理条例では、「国家は豚屠殺場側が規程により人道的な屠殺を行うことを奨励する」と定められています。中国の畜産動物福祉の法的枠組みはまだまだ不十分で、ほんのわずかです。しかし日本はそのほんのわずかよりもさらに少ないと言えるかもしれません。日本の畜産動物の法的枠組みといえば「動物の愛護及び管理に関する法律」が唯一のものですが、この法律には畜産動物に特化した条項はありません。実験動物については一条のみで、基本的に犬猫といったペット中心のものになっています。WAP(世界動物保護協会)は日本の畜産動物保護の評価をD、中国をCとしています。人道的屠殺プログラムの導入に積極的な中国の今の動きを見ていると、今後日本はさらに中国に後れを取ってしまうかもしれません。法的な拘束力はありませんが、中国の豚を人道的に屠殺する技術規範というガイドラインも翻訳しています。内容を読むと、OIEよりも動物福祉に配慮した記述が見られます。畜産法(2006年7月1日施行 国家レベルで制定されたもの)第41条 家畜養殖場は飼育書類を樹立し、下記した内容を明記すべき: (一)家畜の品種、数、繁殖記録、標識情報、出所と出入荷日付。 (二)餌、餌添加物、動物治療薬など投入物の出所、名前、使用対象、時間と用量。 (三)検疫、免疫、消毒の情報。 (四)家畜発病、死亡、無害化処分の情報。 (五)政府家畜獣医主管部門により規定した他の内容。第42条 家畜に適切な繁殖、生存、成長条件と環境を提供すべき。第43条 畜産飼育に関する仕事を従事する中で、下記の行為をしてはいけない。 (一)法律及び関連する規約と国家技術規範の強制性要求に従わず、餌、餌添加物、動物治療薬を使うこと。 (二)食堂から捨てた高温殺菌処理をしない汚れた水で家畜を飼うこと。 (三)ゴミの収集場、またはゴミ収集場のようなところで家畜を飼うこと。 (四)法律及び関連する規約により規定した人類と家畜の健康に危害を与える行為。第53条 動物の輸送は関連する法律と規則に従って行わなければならないし、家畜の安全を守り、必要な空間、食べ物、水を与えなければならない。関連部署は法と規程に基づいて輸送中の家畜の検査を行うべき。【原文】 中华人民共和国畜牧法(2005年12月29日) http://www.gov.cn/flfg/2005-12/29/content_141833.htm【アニマルライツセンター補足】 第41条「家畜養殖場は飼育書類を樹立」に違反した場合、是正措置がとられます。豚屠殺管理条例(2008年8月1日施行 国家レベルで制定されたもの)第8条 豚屠殺場は下記の条件を付けなければならない: (一)屠殺場規模に相当し、水質は関連する規程の基準に従う水源条件がある。 (二)関連する国家規程に従う屠殺を待ち合わせ室、屠殺室、急屠殺室とともに豚屠殺施設と運送手段がある。 (三)法に基づいて健康証明を持つ技術者がいる。 (四)肉製品の品質検査従業員がいる。 (五)国家規定要求事項に従う検査装備、消毒施設とともに環境保護要求事項に従う汚染の予防と改善施設がある。 (六)体障害豚と豚製品を無害化に処分する施設。 (七)法に基づいて動物防疫条件合格証明書を取る。第11条 豚屠殺場は豚の屠殺を行う時、関連する国家規定した操作規程と技術要項に従わなければならない。第15条 豚屠殺場は他のいかなる会社と個人と同じく、豚または豚製品に水や他のものを加えてはいけない。 水と他のものの加えた豚を屠殺してはいけない。【原文】 生猪屠宰管理条例 http://www.gov.cn/zwgk/2008-05/30/content_1000067.htm【アニマルライツセンター補足】 第15条について-中国では豚や豚製品に水などを加えて水増しするということが問題となっています。管理条例は国家のレベルで制定したものでこういった行為は禁止されており、違法行為に属します。 次にみていきますが、豚屠殺管理条例の第三章と第四章には監視管理と法律責任について詳しい規定があります。第三章 監視管理第20条 県及び県のレベル以上の地方人民政側は豚屠殺に対して監視管理作業を強化し、豚屠殺管理作業における重大な問題を直ちに是正して、取り組まなければならない。第21条 牧畜獣医主管部門は当条例に基づいて職責を厳格に履行し、豚屠殺作業に対して日常の監督検査を強化しなければならない。 牧畜10主管部門は監督検査作業を行う時、下記の措置を取れる。 (一)豚屠殺など関する現場に入って検査作業を行う。 (二)関する企業と個人に状況を聞く (三)関する記録、手形など資料を調べ、コピーする。 (四)豚を違法に屠殺する場所、施設を取り締まり、その設備を差し押さえる。牧畜獣医主管部門は監督検査を行うとき、検査員は少なくとも二人で、法を執行する証明書を呈示しなければならない。 関する企業と個人は牧畜獣医主管部門の監督検査作業に対して協力しなければならない、拒否、阻止など行為をしてはいけない。第22条 牧畜獣医主管部門は告発制度を築い、告発電話番号、住所、メールアドレスを公表し、当規定を違反行為の告発を受付するとともに、法に基づいて直ちに取り組まなければならない。第23条 牧畜獣医主管部門は検査作業を行う時、当規定に整えない屠殺場を見つける際には、規定期間内是正を命じる。期限を過ぎて、依然として当条例に整えない時は、区を設定する市政府から営業許可を取り消す。第四章 法律責任(水を加えることに関する条文)第27条 牧畜獣医主管部門は、豚と豚製品に水または他のものを加える豚定められた場所屠殺場、他の企業もしくは個人いずれもその設備それに違法所得を没収するとともに違法所得の3倍以上5倍以下の過料に処す。豚定められた場所屠殺場または他の企業の主な責任者に対して1万元以上2万元以下の過料に処す。罰金の量が確認できない際には、豚屠殺場または他の企業に対して5万元以上10万元以下の料金を処するとともに、個人に1万元以上2万元以下の過料に処す。犯罪を構成する場合は刑事責任を追及する。豚と豚製品に水または他のものを加える豚屠殺場に、上記処罰のほか、牧畜獣医主管部門が規定する権限に基づいて、営業の停止して整理を命じる。情状が重大な場合または豚と豚製品に水とほかのものの加えることを二回以上行う場合は、区を設定する市政府から営業許可を取り消す。第28条 豚と豚製品に水または他のものを加える豚屠殺場に、牧畜獣医主管部門が規定する権限に基づいて、是正を命じ、その設備それに違法所得を没収するとともに違法所得の1倍以上3倍以下の過料に処す。豚定められた場所屠殺場または他の企業の主な責任者に対して1万元以上2万元以下の過料に処し、主な責任者に1万元以上2万元以下の過料を処す。罰金の量が確認できない際には、2万元以上5万元以下の料金を処す是正しない企業に営業の停止、整理を命じる。情状が重大な場合は区を設定する市政府から営業許可を取り消す。豚屠殺実施方法管理条例(2008年8月1日施行 国家レベルで制定されたもの)第13条 豚屠殺は関連する国家規定した操作規程と技術要求事項に従って豚の屠殺を行う。屠殺の前、食べ物を与えることをやめ、少なくとも12時間静養させ、屠殺はシャワー、気絶、瀉血、脱毛または毛を剥がし、腹を切り開き内臓を取り除き、切り分ける手順で行わなければならない。国家は豚屠殺場側が規程により人道的な屠殺の行うことを奨励する。【原文】 生猪屠宰管理条例实施办法 http://www.gov.cn/flfg/2008-08/04/content_1063909.htm【アニマルライツセンター補足】 第13条に違反した場合は、同法38条で罰則規定がある。豚を人道的に屠殺する技術規範(GB/T 22569生猪人道屠宰技术规范 中華人民共和国国家質量監督検疫総肉・国家標準化管理委員会が作成したガイドライン。国が作成したものであるが、法的強制力はない。2008年発行)1、範囲: 当基準は豚屠殺を人道的に行う管理と技術要求事項を規定する。 当基準は豚屠殺企業に当てはまる。2、術語と定義: 下記の術語と定義は当基準に当てはまる。 2.1人道的な屠殺:豚のストレス、恐れ、痛みと苦しみを減らす殺前処分と屠殺方法。 2.2気絶:機械、電撃もしくは気体などを通して意識をなくせるが、依然として呼吸と鼓動を保たせる。 2.3豚追立板:豚を追い立てる工具、一般的にゴムとプラスチックから作り上げる。3、管理: 3.1屠殺企業は人道的な屠殺の管理体系を樹立し、相応の技術要求を実現するのため、施設、操作方法と従業員への要求を規定して採用しなければならない。 3.2体系書類には標準操作手順、設備の操作と守り方法、緊急対応計画案、従業員の職責を含めなければならない。 3.3体系書類には 肉製品質量を左右する人道的な屠殺要求がどのように飼育と運送環節段階にフィードバックされることを明記しなければならない。 3.4施設事故、火事、停電、気体の漏れ出しが含まった突発事故の処置する緊急対応策を制定し、緊急事故の対応する責任者を明記しなければならない。 3.5殺前処分と屠殺を参加する従業員は関連する要求を身につける。4、関係者: 4.1豚を車から降ろし、追い立て、気絶、屠殺実行するなどの操作過程を監督する担当者が付くべき。豚を処分と屠殺する時、担当者は直ちに不当な行為を正す。 4.2車から降ろし、屠り待ち、追い立て、気絶と刺殺など手順を行う際には、他人を導く人道的な屠殺知識が備わる従業員は少なくとも一人がいる。 4.3獣医衛生検査者は然るべき人道的な屠殺知識を備えなければならない。5、施設: 5.1屠殺場は豚の降ろす場所をつけなけれならない。滑らないように、この場所の勾配は20度が超えることが禁止である。豚が畜舎に入ることを導くように、坂の周辺に柵をつけなければならない。 5.2いつでも柵、畜舎、出入口と通路で豚を検査できるようにすべきとともに、病気になる豚、もしくは傷つけの豚を適切な畜舎に移動する。 5.3なるべく角を減らし、直角があってはいけない、豚が自由に移動させるような通路をつけなければならない。 5.4通路には相当した輝度を保って、気絶場所に近づけば近づくほど、その輝度は明るくなる。但し、なるべく影と強いコンテストを避け、あかりを直接に豚の目に差し込むことが禁止である。 5.5気絶の場所に向かう通路には非常口が付いて、いざという時または気絶遅延に供する。 5.6通路には 豚がスピードの緩めと停止、または返せる可能を引き起こすいかなる施設もあるべきではない。 5.7凹凸がない平らな通路にする。排水システムを通路の下に置くすべきではない。もし 豚の行動を妨げないよいに、排水システムの蓋を固め、周りの環境と溶け込んでいるようになる。 5.8畜舎には相当的ラジアンの不透明な囲いと飲水システムが備わなければならない。 5.9天気が暑すぎまたは寒すぎの場合には、畜舎には保温と通風の施設がつく。 5.10なるべく豚を落とす坂に近い所に見つかりやすくて入りやすい体障害豚の畜舎をつける。6、体障害豚の処分 6.1病気になり、傷をつける豚をすぐに屠殺すべき。すぐに屠殺実行する条件が整わない豚を苦しみ軽減の方法で体障害豚の畜舎に移動しなければならない。 6.2気絶して瀉血する方法で体障害豚に屠殺を実行しなけれならない。 6.3緊急屠殺を実行するスタッフは効果的な気絶気配を正しく見つけれなければならない。 6.4体障害豚の畜舎に全天候の清潔な給水システムを備えなければならない。7、車おろすと屠り待ち 7.1静かで和やかに車から豚を降ろす。いかなる場合にも豚に車から飛び降りることを強いるべきではない。 7.2屠り待ち場所はあらゆる豚が同時に立て、寝そべ、自由に振り向くことができるように設定しなけれなならない。 7.3性別、出所、年齢によって、攻撃的な豚がいる可能性がある。その豚を隔離されなければならない。 7.4屠り待ち場所にはシャワーシステムがつかなければならない。シャワーの時間は2時間を超えるべきではない。環境の温度は5度より低い際には、シャワーを使うことを禁止する。8、豚の追い立て 8.1豚を追い立てる際には、静かで辛抱して実行し、手荒いにしてはいけない。通路は滞りがない時に限って、豚を追い立てる。 8.2普段電気棒で豚を追い立てはいけない。通路は滞りがないのに、豚は前に移動を拒否する場合に限って、電気棒を使える。畜舎から気絶の場所までの通路以外のところ、電気棒で豚を追い立てはいけない。電気棒を使う際には、目、口、耳、肛門、性器と腹などの敏感の部位を避けて、成年した豚の体の後部だけを触れる。しかも2秒以上の電撃時間は禁止である。 8.3豚を落とし、追い立てる従業員と畜舎の管理人は暗い服を着なければならない。9電撃気絶 9.1電撃気絶設備は豚が意識のすぐに失ったことを確保するとともに、殺処分にまで意識を回復できないように十分な時間を続ける。 9.2電撃で豚を気絶られることは、硬直期、痙攣期、回復期を含める可逆的な過程である(詳しく内容は付録を参照する) 9.3二点式電撃気絶 9.3.1電流が脳は突き抜けるため、電極と皮膚の接合部は頭の両側、目と耳の間または両耳の後部である。 9.3.2電流は少なくとも1・3アンペアで、通電時間は1秒~3秒である。 9.3.3操作者は豚の効果的に気絶られるのを確保するため、電撃した豚の状態を確認しなければならない。 9.4三点式電撃気絶 9.4.1電流は少なくとも1・3アンペアで、通電時間は1秒~2秒である。 9.4.2二点式携帯電撃設備を予備の設備とする上で、三点式電撃気絶設備を使える。 9.4.3電撃した後、豚が効果的に気絶されたのを確保し、でなければ、すぐに気絶を再び実行しなければならない。9.5設備メンテナンスの要項 9.5.1設備を使えられるように仕事を始める前に各気絶設備(予備の設備込み)を検査する。 9.5.2気絶実行の前にその設備の輸出電圧と輸出電流は豚の頭(200オーム~400オーム)のような抵抗器とする設備でテストする。 9.5.3電圧計と電流計は操作者が見えやすい所に据え付けられる。 9.5.4電極の清潔を保つように、電撃気絶整備を使い終わる後、片付けなければならない。 9.5.4緊急事態または故障が起こる時に使えるように、予備の電撃気絶設備が専用の場所に置く。10刺殺 10.1気絶しなかった豚を刺殺すべきではない。 10.2気絶した15秒のうちに刺殺する。付録AA.1 豚を効果的に気絶られることは硬直期、痙攣期、回復期を含める可逆的な過程で、普段豚が電撃設備から離れる0秒~20秒は硬直期、15秒~45秒は痙攣期、60秒以降は回復期である。 A.1.1硬直期の特徴 a)豚が蹲ってだんだん硬直になる。 b)規則的な呼吸を失う。 c)散瞳して、角膜反射機能を失う。 d)大小便を漏らす。 e)前肢を伸ばして、後肢は体に曲がる A.1.2痙攣期の特徴 a)筋肉が緩んでいる b)四肢が不随意に痙攣する A.1.3回復期の特徴 a)正位反射が現れる b)規則な呼吸に戻る c)瞳が正常な状態に復する 翻訳/調査:ARCスタッフ王又尼Share This Previous Article韓国の動物保護法 Next Articleタイ 家禽保護の規則 2019/05/27