チーズのパラドックス:ベジタリアンは肉以外の動物性食品の消費をどう正当化する?

The cheese paradox: How do vegetarians justify consuming non-meat animal products?

Devon Docherty, Carol Jasper

2023/07/16

https://doi.org/10.1016/j.appet.2023.106976

論文概要

 

「肉のパラドックス」は、人々が動物に対して抱く親近感と、その肉を食べたいという欲求との葛藤から生じる心理的不快感を指し、動物倫理に関心を持つ研究者によって提唱されてきた。しかし、肉以外の動物性食品を消費する心理はどのようなものなのだろうか? 現代では、ほとんどの畜産動物が傷つけられ最終的には殺されてしまうのである。卵や乳製品など、肉以外の動物性食品が孕む倫理的問題は食肉と同じか、あるいはより深刻かも知れないが、それに見合うほどには批判の目を向けられていない。このため肉とは異なって、卵や乳製品を消費する心理に関してはほとんど知られていない。

このギャップを解決するため、本研究ではベジタリアンに注目した。ベジタリアンは肉を食べる人よりも動物に共感的な関心を示す傾向が強いにもかかわらず、これらの食品を積極的に選んで食事に取り入れる。このような状況で起こる心理的葛藤は、上記の問題を探求するうえで適していると考えられる。ベジタリアンを対象としたインタビューで得られたデータを主題分析によって分析した結果、ベジタリアンは肉以外の動物性食品に対して強い倫理的問題を感じているものの、個人的利益や社会的規範と関連付けてさまざまな正当化の理由を説明していることが明らかになった。認知的不協和は明らかであり、参加者はそれを解決するために様々な戦略を用いていた。本研究は、食品心理学と動物倫理の研究を発展させるとともに、肉以外の動物性食品を削減するための戦略—より持続可能で思いやりのある世界を追求する上で重要なステッブ―にも寄与するであろう。

 

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