制度の変化と消費者運動の限界

Institutional change and the limitations of consumer activism

Jacey Reese

2020/02/12

https://doi.org/10.1057/s41599-020-0405-8

論文概要

 

社会の変化を促す、あるいは変化の緩和を目指す多くの組織が直面するのは、個人の行動と社会の制度のうちどちらを変えるべきかという戦略上のトレードオフである。本稿では、このトレードオフに関する概念分析を提示し、最初のケーススタディとして、巨大な課題としての工場畜産を取り上げる。

従来、新興の社会運動がこの世界的な問題に取り組む際には、「ヴィーガンになろう」といったメッセージを掲げることや、ベジタリアンを支持するビラを配るといった戦術によって個人の消費を変えることに重点が置かれてきた。本稿では、こうした焦点の置き方について批判的に検証し、これに代わる「制度からのアプローチ」では、特に新しい食品技術の開発と商業化を通じて政府や企業、社会規範などを変えることを目指すことを提案する。

効果的利他主義ではプラスの効果を最大化することが目標とされており、本稿ではこうした観点から、制度的アプローチを拡大して採用することで組織はその倫理的目標をより効果的に達成できる可能性があることを示す。個人をターゲットしたアプローチにも費用対効果の高い使い方はあるため、これを完全に放棄してはならないが、少なくとも工場畜産の状況に関しては大幅な削減を目指すことが重要と思われる。また、他の社会的文脈におけるこうしたトレードオフに関してはさらなる研究が必要である。

 

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