論文概要
本稿では、赤肉・加工肉に対して課税することに関してスウェーデンの国民と政治家の態度を調査し、その課税の枠組みについて、1.気候変動税、2.公衆衛生税、3.気候変動税と公衆衛生税の両方、のいずれかとした場合に課税を受けいれる態度がどのように変わるかを調べた。
さらに、ここで得られた税収の使途について、A.農業に対する支援、B.気候変動(公衆衛生)に関する対策の強化、C.さまざまな食品に対する付加価値税の引き下げ、D.果物・野菜に限定した付加価値税の引き下げ、のいずれかとした場合に、課税を受容する態度の変化についても調べた。これらの税収の使途については、その政策による効果、コストの中立性*、(農家など)影響を受ける人々への補償を要因として相互に分離できるように実験を計画した。実験調査のデータは3,233人の市民と1,253人の政治家から収集した。
その結果、課税の枠組みは政治家には全く影響を与えず、市民にはわずかな影響しか与えなかった。しかし、市民は、公衆衛生のみと比べて、気候変動と公衆衛生を組み合わせた課税をやや肯定的に受け止めていた。税収の使途に関しては、使途を限定した場合のほうが限定しない場合よりも全般的に受け入れられやすかったが、コストに関して中立的な2つの使途(付加価値税の幅広い引き下げ、果物・野菜のみの付加価値税の引き下げ)は、市民と政治家の双方にとって最も受け入れやすい提案となっていた。
赤肉・加工肉に対する課税に向けては、平均的な消費者における食費の支出総額が増えないようにするとともに、課税の効果を高めるように税収を用いることで、その実現可能性はより高いものとなる。
* ここでは、食肉消費と関連性の高い農業や気候変動・公衆衛生は、課税において中立的ではなく、付加価値税の引き下げは中立的であるとの前提に立っている
Emma Ejelöv, Jonas Nässén, Simon Matti, Liselott Schäfer Elinder, Jörgen Larsson
2024/12/05
Public and political acceptability of a food tax shift – An experiment with policy framing and revenue use